マーティの母、ロレインが一目ぼれしたカルバン・クラインのボクサーパンツ
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一1作目の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)で、カリフォルニア州のヒルバレーに住む高校生のマーティ(マイケル・J・フォックス)がタイムスリップしたのが、1955年11月5日。場所は同じくヒルバレーだった。実はこの55年は父ジョージと母ロレインが結婚するきっかけとなった年で、ロレインの父親がジョージをクルマではねてしまい、救護のため自宅に運ばれた際にロレインがひと目惚れして2人は結婚するはずだった。ところが未来からやってきたマーティが木から落下した父ジョージを助けてしまったために、父の身代わりとして事故に遭う。そこでロレインの家に運び込まれ、母ロレインに出会ってしまうのだ。
「寝てなくちゃダメよカルバン。頭を打っているんだから」と目が覚めたマーティにロレインは話す。いつの間にかマーティのジーンズを脱がしたロレインは、マーティがはいていたアンダーウェアに入った「CALVIN KLEIN」のブランド名を見て、彼の名前を「カルバン」と勘違いしてしまう。さらには「紫の下着なんて初めて見た、カルバン」と、ロレインは未来の息子に恋心を抱いてしまったのだ。しかし、それではマーティはこの世に存在しないことになってしまう。そこでマーティが2人の恋の架け橋となるために奔走する…というのが1作目の基本ストーリーだが、ロレインがマーティに恋するきっかけとなったのが、カルバン・クライン アンダーウェアのボクサーパンツなのだ。
1942年にニューヨークのブロンクスで生まれたカルバン・クラインは、68年にレディースウエアをスタートさせた。カルバン・クライン アンダーウェアが誕生したのが81年だから、マーティがタイムスリップした55年のロレインにとってはまだ未知のブランドであったわけだ。映画でマーティがはいたのはラベンダー風の薄い紫。それでもロレインの目を奪うには十分セクシーであったに違いない。
このボクサーパンツに目を奪われたのはロレインだけではない。官能的でボディコンシャスなアンダーウェアとして、21世紀を迎えたいまでも世界中の男性を魅了し、愛用されている。