フォーマルライクな衣装に身を包んだ「ドルーグ」を象徴する、純白のサスペンダー
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一映画『時計じかけのオレンジ』で描かれた傍若無人な「ドルーグ」たちのスタイルを仔細に見ていくと、彼らはきわめて英国的な、しかも紳士的なアイテムを着こなしていることがわかる。それらを身に着けることは、この映画のもつ風刺的な側面を逆に際立たせる役目もあるが、このサスペンダーもそんなアイテムのひとつだ。
英国のファッション評論家ポール・キアーズによれば、20世紀初頭まで、英国の正式なパンツ(英国式にはトラウザーズ)にはベルト通しが付いていることはまずなかったという。つまりほとんどの男性がサスペンダー(英国式にはブレイシーズ)でパンツを吊っていたことがわかる。いまでも英国の伝統的なメンズショップに行くと、必ずサスペンダーの用意があるが、今回紹介するのは英国のターンブル&アッサーのサスペンダーだ。
ウィンザー公やウィンストン・チャーチル元首相などがこよなく愛した名店で、ロンドンのジャーミン・ストリートに本店を構える。シャツやネクタイで有名な店だが、サスペンダーも当然のことながら英国でつくっている。
映画に登場するドルーグたちは、生成りの上下に白のサスペンダーを合わせている。ターンブル&アッサーの製品は、フォーマルウエアに合わせることを想定してつくられたのだろう。真っ白でモアレ柄の入ったシルク素材で、フォーマルな場面によく使われるからだ。デザインもボタンで付けるクラシックなタイプで、アレックスたちと同じように股上の深いタイプのパンツが似合うだろう。アレックスのスタイルを真似るには、絶好のアクセサリーではないか。