【Podcast】買ってよかった大人の名品2020──スタイリスト・井藤成一編
「大人の名品図鑑」ポッドキャスト版がスタート。
第一弾は編集者の小暮昌弘さんと、スタイリストの井藤成一さんによる「2020年に買ってよかった大人の名品3選」。
多くの人にとって、語り尽くせないほど様々なことがあった2020年。モノ選びのプロであるふたりが、買ってよかった大人の名品とは?
<大人の名品図鑑を観る>
買ってよかった大人の名品、2019年のベスト1は?
大人の名品図鑑アーカイブ
「大人の名品図鑑」ポッドキャスト版がスタート。
第一弾は編集者の小暮昌弘さんと、スタイリストの井藤成一さんによる「2020年に買ってよかった大人の名品3選」。
多くの人にとって、語り尽くせないほど様々なことがあった2020年。モノ選びのプロであるふたりが、買ってよかった大人の名品とは?
<大人の名品図鑑を観る>
買ってよかった大人の名品、2019年のベスト1は?
大人の名品図鑑アーカイブ
買ってよかった大人の名品その1。「スリーピージョーンズ」のパジャマ。
大人の名品図鑑で紹介したブルックス ブラザーズのパジャマ に感化されて購入したという井藤さん。コットンブロード素材のしっかりとしたつくりなので、“パジャマスーツ”としてそのまま外出もOK。
買ってよかった大人の名品その2。「ランズエンド」のカットソー。
スーピマコットンで肌触りよく、タートルでも首元がやわらかく肩がこらない。洗濯しても乾きが早いのも魅力。ブランドのロングセラーモデルで、小暮さんも愛用中だとか。
買ってよかった大人の名品その3。「トールフリー」の手摺りプリントTシャツ。
ショップがゲリラ的にリリースした“映画監督の顔”シリーズ。とあるグラフィックアーティストが、ジム・ジャームッシュ、デヴィッド・リンチ、フランシス・フォード・コッポラ(の若かりし頃)をイラスト化。普段は原色のTシャツを選ぶことは少ないが、1点モノに心惹かれて全種類購入した。
<大人の名品図鑑を観る>
買ってよかった大人の名品、2019年のベスト1は?
大人の名品図鑑アーカイブ
ロイヤル コペンハーゲンはデンマークの王立製陶所として1775年に創業した。以来、現在までこの国の王室御用達のテーブルウェアブランドであり、北欧のものづくりの代名詞であり続けている。熟練の手仕事による高度なクオリティと、長い歴史に裏づけられた気高さは、時代に左右されない価値をもつものだ。
ただしロイヤル コペンハーゲンは、常に新しいデザインに取り組むブランドでもある。その伝統の延長線上に名作と呼ぶべきものをいくつも生み出してきた。なかでも近年、最もエポックメイキングなシリーズは「HAV」(ハウ)に違いない。建築事務所「BIG」を率いるデンマークの著名建築家、ビャルケ・インゲルスらによるデザインチーム「KiBiSi」(キビシ)を起用し、ハウが発表されたのは約2年前。それはブルーの花柄で彩られたロイヤル コペンハーゲンのイメージを一新する、きわめて大胆なものだった。
KiBiSi(キビシ)
デンマーク生まれの3人が2009年にスタートしたデザイン・ユニット。家具、日用品、電気製品など、各々の持ち味を活かした幅広いデザインを手がける。
キビシの3人がハウをつくる過程でインスピレーションを得たものに、デンマーク北西部のコールド・ハワイと呼ばれるコミュニティがある。北欧有数のサーフスポットだが、その名の通り温暖な場所ではない。都会に住む人も、ここでは波とひとつになり、ありのままの自分に還っていく。海で冷えた身体を温めてくれるのは、仲間たちと囲む食事だ。シンプルゆえに本質的なライフスタイルは、現代における真のラグジュアリーと言えるのではないだろうか。ハウは、そんなシーンにふさわしいテーブルウェアとして発想された。
一連の器に用いられたグレイッシュなブルーは、まさに北欧の海の色そのものだ。職人が2種類の釉薬を吹き付け、焼成の過程で釉薬が混じり合い、独特の色彩をつくり出していく。波打つ海面にも、魚の鱗のようにも見えるレリーフは、1892年に発表された歴史的コレクション「シーガル」のパターンを参照した。
今年、ハウに新しく加わったジャグに象徴される、自然の造形を思わせるフォルムも印象深い。このジャグは、以前からラインアップされていたカラフェを小ぶりにしたような形をしている。カラフェは、海面から飛び立つ白鳥の胸をイメージして、首元から徐々に色が薄くなるグラデーションを施していた。新作のジャグはそれとは逆に、底から上に向かってのグラデーションが美しい。ダークブルーの水面に降り立つ白鳥を連想せずにはいられない。
またプレートには、いままでよりもひと回り小さく、使い勝手に優れた直径17㎝のタイプが加わった。既存のプレートと重ねると、まるで波紋のようなパターンが生まれる。ジャグやカラフェと組み合わせることで、テーブルの上に静かなストーリーが展開していく。
これまでのロイヤル コペンハーゲンの世界観を一新する、ハウがつくり出す澄みきった風景。ただしブランドに受け継がれるクオリティと気高さに、妥協はない。これは豊かな伝統から生まれた現代の器なのだ。
今秋、発表されるロイヤル コペンハーゲンの新作を手がけるのはガムフラテージ。そのモチーフと、発想のルーツをたどる。
伝統的なパターンに、新しい生命を吹き込む
ガムフラテージは、いま人気が急上昇しているコペンハーゲンのデザイン・デュオだ。それぞれの出身国であるデンマークとイタリアの感性を融合させ、さらにオリジナリティを確立した作風がジャンルを超えて評価されている。たとえば2019年発表の「ブルーミスト」は、彼らが手がけたパリの北欧レストランのためのテーブルウェアで、ブルーと白い素地のコントラストが鮮やかだ。
ふたりは21年秋の発表に向けて、ロイヤル コペンハーゲンと新しいプロジェクトを進めている。「ロイヤル クリーチャー」と名付けられるこのシリーズは、海中、水辺、その周辺という3つの場所に棲む生き物がモチーフ。クラシックな印象の「プリンセス」シリーズをベースに、その表面を魚、虫、水棲生物などの姿で彩る。この絵柄は、ロイヤル コペンハーゲンが創業時から用いてきたブルーフルーテッドのパターンを分解し、再構成して描かれるという。ブルーフルーテッドはこのブランドのデコレーション番号「No.1」であり、200年以上の歴史を象徴する絵柄だ。
簡潔で洗練されたイメージのあるガムフラテージだが、ふたりは遊び心を大切にするデザイナーでもある。ロイヤル クリーチャーは、意外性あふれる着想に基づき、伝統的な絵柄から新しい魅力を引き出す試みだ。ハウに引けを取らない斬新さをもつ一方で、ロイヤル コペンハーゲンのベーシックな器とも見事な調和を見せる。
ブランドの新たな歴史を刻む、次なるプロジェクトの全貌が明らかになるのを楽しみに待ちたい。