店づくりの流れが変わった? 南青山に急遽出現した、ルメールの新店舗に注目。
店づくりに新たな動きが起きている。都内の空き物件をスケルトンのまま活かした空間に、単菅パイプや中古の家具が持ち込まれ、最小限の操作で一時的に“場”がつくり出されている。仕掛けているのは、設計・デザイン事務所「ダイケイ・ミルズ(DAIKEI MILLS)」とアートブック・ディストリビューター「トゥエルブブックス(twelvebooks)」の対話から生まれたプロジェクト「スクワット(SKWAT)」。表参道駅から根津美術館方面へ向かう御幸通り(フロムファースト通り)沿いにオープンした「スクワット/ルメール」も同プロジェクトの一環である。
什器には、100年ほど前に大阪で建てられた古民家の廃材を再利用。法隆寺の五重塔などに見られる、接着剤や釘を使わない伝統技法の木組みが用いられている。また、かつて存在していた店内中央の壁は壊され、左右の空間が一続きとなっているのも特徴的。このようなユニークな内装と、店内の洋服がしっくり馴染んでいるのは、スクワットとルメールの思想が根っこの部分で一致しているからだろう。
ルメールは、クリストフ・ルメールとサラ=リン・トランがクリエイティブディレクターを務めるファッションブランド。他ブランドとのコラボレーションでも話題を集めるルメールだが、ソーシャルメディアで映える服づくりとは距離を置き、シンプルで実用的ながら美しい洋服をつくり続けてきた。今回のコラボレーションは、急増する空き物件を有効活用するスクワットの活動に、資本主義社会への疑問を抱いてきたルメールが共感したことから生まれた。使える素材をうまく活かし、スピーディかつ柔軟に手がけられた店舗は時代を象徴している。そして店内に並ぶ2020年秋冬のメンズとウイメンズのコレクションアイテムは、トレンドに流されることなく、一貫して着る人の日常を考えてシルエットや着心地を追求したもの。既存のラグジュアリーの概念が崩れつつある昨今、この“場”を訪れ、服に袖を通し、新たな豊かさを感じてほしい。