デザイナーの岩井さんの推しは、ニットのワークウエア
通常はデニムのジージャンとジーンズを、ニットにアレンジしたセットアップ。ジャケット ¥59,400(税込)、パンツ¥53,900(税込)/オーラリー(オーラリー 青山店 TEL:03-6427-6336)
ジージャンとジーンズこそ普遍的な男性の日常着である。しかし生地が固く印象もハードなデニムは、家族でくつろぐ室内着にはしにくいものだ。ニットが得意なオーラリーが今季初めてつくったこのニット製ワークウエアなら、巣ごもり生活にアクティブな空気を運んでくれるだろう。近所の外出時にはニットの上下を着ることが多いというデザイナーの岩井さんにとっても、新しい発想のデザインのようだ。
「ウルグアイ産の糸を、限界まで目を詰めて編んだ編地です。これまで触ったことのないハリ感があり、伸びにくく毛玉も少なそうな安心感もあり、デニム型のセットアップにしてみました。ニットならではの上品さを出すため、各部位の縫い合わせはリンキングという繊細なつなぎ方を採用しています」
シャープなミシン縫製でなくリンキング手法により優しい印象の仕上がりに。リベットやドーナツボタンといったディテールがいいアクセントだ。
いま人々が求めている、または必要な服とは?という問いに、
「誠実な服。ささやかでも気持ちが高揚する服」
と答えた岩井さん。
時代感覚がありつつも普遍的な服という、舵取りの難しい服づくりがこれからさらに増えていくのだろう。
PRの新井カナエさんが明かす、メディアに評判の服。
ベーシックな形で、個性的な編地と美しい色で勝負するカーディガン。家生活の気分を上げてくれる一着だ。カーディガン ¥41,800(税込)/オーラリー(オーラリー 青山店 TEL:03-6427-6336)
「ファッション誌では自宅やリモートワークで使える服や、着心地がいい服の企画が増えています」
PRの新井さんは、仕事で関わるメディアの動きをそのように語る。さらに、
「『なぜその服を選ぶのか』の理由が重視されてきました」
という。誰もが自分らしい生き方を追求しはじめた現在、メディアも大きな変革を迫られている。もはや軽いノリで流行のお洒落提案をされても説得力がない。この状況の中でジャーナリストやスタイリストなどから人気を得た今年のアイテムのひとつが、ふわふわの風合いに癒やされるカーディガンだ。
「オーラリーらしいきれいな色が目を引く」「着る前から気持ちのよさが伝わる」「柔らかで軽くストレスがない」
こうしたコメントが寄せられているそう。モヘアセーターのような温もりとボリュームがあり、着る人を優しい表情に見せる。男性には新鮮に映るジェンダーレスなこの服の着こなしを、新井さんがアドバイス。
「合わせる服をグレーやベージュなど繊細な色にすれば、今季らしさを出せるでしょう。でも難しく考えずここで着たようにパンツをデニムにしたり、いつもの服装に合わせるだけでOKです。カーディガン以外をワントーンに揃えるのが、色のきれいさを強調するコツでしょうか。インナーはかっちりとしたシャツよりもカットソーのほうがリラックスして見えます。素材が上質なのでだらしなくならないのがこの服の良さです」
素材はペルー産アルパカ70%、オーストラリア産ウール30%の比率。糸がループ状になっており、タオルやカーペットのような印象で肌寒いときの羽織モノにもぴったり。
こうした華やかな服を手に入れてコーディネートを模索すれば、マンネリの着方から脱出するひとつの道になる。人に会う機会が減った昨今は、自分改革に着手するいいチャンスでもあるのだ。
長く着られる上質な服は、定番ブランドの歴史的なアイテムとは限らない。新しくデザインされた服には、確実に現代の感性が含まれている。仕事も私生活も次の時代に突入してきたいまこそ、着る服が自分の心と周囲の人に及ぼす影響の大きさに目を向け、ワードローブを見直してみよう。