新ブランドWARDER(ワーダー)、ジャンルと価格の壁を越えたネクストレベルの服。
「Less but Better (より少なく、だがよりよく)」。20世紀半ばに活躍したインダストリアルデザインの巨匠、ディーター・ラムスの言葉である。この言葉を引用して自らの作風を言い表すファッションブランドが2021年に始動した。ニッポンの「ワーダー(WARDER)」である。彼らの服をしっかりと眺めていくと、もうひとつ別の言葉も当てはまると気づく。それは、「神は細部に宿る(God is in the details)」。ラムスと同じドイツ人の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが好んだとされる名言である。高級生地のみならず縫製やディテールにも手を抜かない服づくりが、ワーダーを非凡な存在へと高め上げている。
服でミニマリズムを成立させるには、複雑な構成要素をバランスよく調和させることが不可欠だ。手間を掛けた高級品はコストが掛かり、価格にも反映されるのが通例である。しかしワーダーは品質の割にリーズナブル。オーダーメイドシャツ仕様のほつれにくい根巻きつけのボタン、エジプト産ギザ綿から選りすぐられた「フィンクスコットン」といった贅沢な仕様を日常で愉しめる。中間マージンをなくし、販売も自社ECサイトを主な販路にすることで価格を抑えた。購入者に余計な金を使わせまいとする姿勢が、ミニマリストらしい発想で頼もしい。
デザインは現代的なミックステイストに基づく。ワーク、ミリタリー、アメトラ、スポーツがベースなのはニッポン的だが、出来上がった服からはヨーロッパのモードの気配が色濃く漂う。古着をアレンジした “上質な大人服” がいま主流のトウキョウメンズとは一線を画す個性がある。
上写真のジャケットも黒と白のコントラストがクリーンで、ドレッシーなムードに満ちた一着。表地はスーパー150'sの細番手ウールとカシミヤを混紡させたトロピカル生地。中綿入りで保温性があり、重ね着しやすいようにアームホームが広く、真夏を除く3シーズン着られるだろう。同素材のテーラードジャケットとのレイヤードコーデが想定された服だが、白Tシャツの上に羽織ったり、ジージャンやルーズなニットなどのカジュアルな服にも合わせやすそうだ。