土着的なモチーフを配しても、クリーンなエレガンスに仕上げるのがラブラムロンドンのスタイル。シエラレオネの伝統の家や、コットンツリーの幹を胸飾りにしたような図案が、美しいリネンシャツを飾っている。左のシャツ ¥55,000(税込)、右のシャツ ¥50,600(税込)/ラブラムロンドン(エスディーアイ TEL:03-6721-1070)
ラブラムロンドンのキャッチコピーは、「Designed by an Immigrant(ある移民によるデザイン)」である。ファッションを通じてアフリカ文化への理解を深める活動を続けるドゥンブヤに、メールで幾つかの質問を投げた。ほどなく返ってきた丁重な答えを、一問一答形式でご覧いただこう。彼の熱い思いが伝わってくるはずだ。
★シエラレオネ、または西アフリカの文化を、どのように服に取り入れていますか。
「洋服のコンセプトやシェイプは、リアルクローズを意識しています。英国軍のミリタリーウェア、サビルローのテーラードジャケットやシャツなどです。その中で西アフリカで太古からお金として使われていたタカラガイをボタンで表現したり、シエラレオネの首都フリータウンで信仰の対象となっている大樹コットンツリーをプリントのモチーフにしたり。ただ私がクリエーションで重要視しているのは、シエラレオネで暮らす人々が普段の生活で身に着けている衣服です。使い古されたコットンやリネンのシャツやトラウザーズが自然に存在し、とても美しいのです」
★ドゥンブヤさんがファッションデザイナーになったのは、どのような経緯からですか。
「私は小さい頃から物語と洋服が大好きで、ずっとファッションの世界に飛び込みたいと思っていました。しかしファッション文化が根付いていないシエラレオネで、両親は私がもっと安定的な仕事に就くように促していました。この先、移民としてロンドンで暮らすことの大変さをよく理解していたからです。でも私はファッションの道に進み、過去の経験がコレクションの軸にある ‘Designed by an Immigrant’ のキャッチコピーに大きな影響を与えています」
デザイナーのフォディ・ドゥンブヤ。photo © LABRUM LONDON
★子どもの頃から外国に住んでいますが、出身国を大切に思うのはなぜですか。
「私のクリエイションにはシエラレオネを中心とした西アフリカの文化がとても深く根付いています。内戦による医療の崩壊、紛争ダイヤモンドビジネスを手引きする腐敗した政府、黒人奴隷の歴史など西洋で語られていない事実がとても多くあります。このような悲しい歴史もありながらフリータウンの海岸や、黒人奴隷解放の象徴となったコットンツリーなど、とても美しい自然や文化があるのもまた事実です。日本では悲しい歴史の方が知られているのですよね?? 西アフリカの悲しみや喜びの歴史と現実の両方を伝えることで、西アフリカ文化と西洋文化の懸け橋になることが少しでも出来たら素晴らしいと感じています。また私のアイデンティティの中で、もう一つ重要と信じているのが移民であるということです。私にとってロンドンの移民コミュニティはとても大切なもの。属している多くの人は音楽、アート、ファッションのクリエイターです。ですが世界中にいるその友人たちが、メディアによってネガティブなイメージにさらされています。それをファッションを通じてポジティブな物に昇華したいと願っています」
★日本のデザイナーで好きな人や影響を受けた人がいれば教えてください。
「ビズビム(VISVIM)の中村ヒロキさんが私のアイドルです。彼の様々なテキスタイルをコレクションのストーリーに融合させる方法、また細かなディテールに対する情熱的なアプローチが大好きです」
話の中で彼は、アフリカの負の側面だけがパブリックイメージとして流通しがちな点に言及している。仲間のクリエイターの創造活動にバイアスが掛かることへの危惧。だが幸いにも、ラブラムロンドン自体にはその心配がなさそうだ。なぜならどの服も奥行きが果てしなく深く、そのようなブランドは世界中を見回しても決して多くないからである。