午前中は仕事、午後は子どもとの時間。自然豊かなサルデーニャでテレワークを
「コロナ渦によるロックダウンが解除され、僕たち家族はサルデーニャにやってきた」と言うのはダネーゼ、アレッシーなど有名ブランドの家具から公共のベンチまでデザインするインダストリアルデザイナーのジュリオ・イアケッティ。
意外にも仕事人間でイタリア人にしては珍しくバケーションをとらなかったという彼は、2年前にサルデーニャに出張に来て、島の北にある小さな街「フェルティリア」に一目惚れし、それから人生が変わったのだという。
「ここが好きになって別荘を買って夏休みを過ごすようになったんだけど、今年は3カ月ここにいることにした」
この地は、特別な観光地ではなく地元の人が普通に暮らす場所。だから生活しやすいというメリットもある。
「僕の仕事はノートとペンさえあればどこにいてもできる。ミラノには頼れるスタッフがいるからね」と笑う。
窓を開けると海があり、眩しいくらいの光と潮風、周辺も自然があり新鮮な魚や野菜がいつでも食べられるというこの上ない贅沢が味わえる場所だ。
ミラノの家から好きな家具もたくさん持ってきて居心地のよい空間に仕上げている。「海の近くの家だから掃除がしやすいことがポイント。カスティリオーニのライトやステファノ・ジョバンノーニのテレビ台に自分がデザインした家具も。シンプルな空間だね」
彼のテレワークは毎日9時30分から4人のスタッフとの会議から始まる。SlackやZoomを使い、時間は毎回30分ほど。これ以上の時間になると集中力がなくなるから。指示はアートディレクションについてだけ、他はそれぞれの担当に任せているという。
会議、クライアントへの連絡で午前中は終わり、家族でテーブルを囲み昼食を済ませ、午後はなるべく子どもたちと過ごすように心がけている。
「テレワークのおかげで家族と一緒に居られる時間が多くなったから、僕はとてもうれしい。ずっと子どもが横にいるから、仕事に集中するのが難しいのも事実なんだけれど」
これからはウイルスと共存しなければならず、ライフスタイルや価値観も変えて、いろいろ工夫していかなければならないとも言う。
「将来ミラノを離れてサルデーニャにオフィスをつくろうと思っている。スタッフもここに呼べるからね」と話す。
彼の働き方を見ていると、都市で働くことの便利さがすべてではないことに気づかされる。それよりも、自然がたくさんある場所のほうが最高なのだろう。