手仕事のぬくもりと精緻な技に釘付け! 「ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ...

手仕事のぬくもりと精緻な技に釘付け! 「ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)」展で伝統工芸の美しさを堪能。

文:内山さつき

「みる」「遊ぶ」「知る」の3つの視点から、ヨーロッパの主要玩具メーカーによってつくられた木製玩具約600点あまりを展示。

誰もが幼い頃、手に取って遊んだ記憶のある、積み木やパズル。無意識の内に触れ、親しんでいたものの中には、大人になってから改めて見直すと、そのデザイン性の高さや形の美しさにはっとさせられるものも多いかもしれません。戦後ヨーロッパでつくられてきた、デザイン性と機能性ともに優れた木のおもちゃが一堂に会する楽しい展覧会「ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ)」展が、目黒区美術館で開催中です。

「子どもはおもちゃを通して、世界を知っていく」。これはスイスの玩具メーカーの創業者、クルト・ネフが残した言葉。それゆえに、美しく優れた玩具で遊びを通して学んでほしいと、多くの教育者たちが「手で遊び、考えること」をテーマに良質な木の玩具を考案してきました。特に興味深いのは、幼稚園の創始者であるドイツのフリードリヒ・フレーベルによる「ガーベ(ドイツ語でgabe。英語ではgiftの意)」。円筒、球、立方体を組み合わせたガーべは、現在の積み木の基礎となって、世界中に広がりました。日本でも明治時代に「恩物」として、実際に教育現場で使用されています。このほかにもイタリアの教育学者モンテッソーリが考案した玩具などもあわせて展示。木のおもちゃをめぐるさまざまな試みを目にすることができます。

もうひとつの目玉は、ドイツとチェコの国境付近に位置するエルツ地方の伝統的な木製玩具。鉱山で栄えたこの地方のクリスマスの窓辺を飾る「クリスマスピラミッド」や、鉱夫と天使をモチーフにした燭台、童話や戯曲にも登場する「くるみ割り人形」などが勢ぞろいします。手仕事によって成し遂げられた作品の美しさ、愛らしさに加え、驚きなのはその製造過程。生産性を上げるために考案されたろくろを使い、木の輪を削り出して動物の原型を作る「ライフェンドレーエン」という技術は、世界に類を見ないユニークなもの。その理論や再現映像に釘付けとなることでしょう。

会場には、展示作品と同じ種類の玩具で遊べるプレイコーナーも。ヨーロッパで受け継がれる美しい木の文化に、ぜひ触れてみてください。

1962年にデザインされ、現代も愛されているロングセラーの積み木。「リグノ」1962 年 基尺5㎝ Naef Spiele AG スイス

「ライフェンドレーエン」の技法を用いられてつくられたクリスマスの燭台。高さ64㎝ Reifendrehwerk Christian Werner ドイツ・エルツ地方

ヨーロッパの木の玩具(おもちゃ) ―ドイツ・スイス、北欧を中心に

開催期間:〜9月3日(日)
開催場所:目黒区美術館
東京都目黒区目黒2-4-36
開館時間:10時~18時(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日
入場料:一般¥700
http://mmat.jp/

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