100㎡を超える広さの客室に天然温泉を引いた「オンセンスイート」は2室のみ。室内は桜の木を多用。庭の石垣は二条城の石垣に着想。
地階のサーマルスプリングスパは、ジャグジーを備える。香川県高松市の巨大な庵治石(あじいし)が圧巻。出た後は身体がポカポカ。
館内へ足を踏み入れ、低い天井のロビーを抜ければ、一転、吹き抜けの開放的なラウンジ。窓の向こうに広がる水盤から日本庭園へと続く眺めが、なんともドラマティックだ。庭園を建物が取り囲むレイアウトで、根底には庭と建物が一体となり美しく調和する「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の精神がある。たとえば、晴天の日はロビーと中庭を仕切る窓が全開となる。また、天井から吊り下げたアートには水面を思わせる模様が描かれるなど、内部と外部をゆるやかにつなぐ仕掛けが随所に施されている。
2軒のレストランでもまた、四季のうつろいを感じながら特別なひと時を過ごすことができる。ガストロノミー鉄板「都季─TOKI─」で腕をふるうのは、「リッツ パリ」で活躍した浅野哲也シェフ。西京味噌に漬け込んだスモークサーモン、フレンチ風の真鯛の蕪蒸しなど、日仏融合の独創的かつ洗練された世界へと誘われる。
季節の草花が咲く庭の向こうに立つ「四季の間」。施工は数寄屋建築の匠、安井杢工務店。慶事などレストランの別室として利用可。
13年間フランスで研鑽を積み、帰国後は京料理を勉強中の浅野哲也シェフ。「歴史ある土地で、日本のブランドを世界に発信したい」
ハイライトは、敷地内の地下1000mから湧き上がる天然温泉水を活用したサーマルスプリング。水の滴る音がかすかに響く、岩盤に囲まれた仄暗い空間。ぬるめの湯に静かに浸かっていると、地中奥深くにもぐっているように錯覚する。温泉を客室でひとり堪能したいなら、露天風呂付きの「オンセンスイート」がお薦めだ。
他にも多彩な客室が揃う。二条城眼前の部屋はその眺めに気分が高揚するし、中庭に面した部屋では刻々と変化する庭の表情に魅了される。茶室を現代的に解釈した上質な空間を彩る、三井家旧蔵の美術品をモチーフにしたアートの数々にも注目だ。
三井グループの総力を結集して、粋を極め贅を尽くした、日本を代表するラグジュアリーホテル。その物語はいま始まったばかりだ。
「四季の間」の広間。襖絵は現代日本画家の朝倉隆文が庭の四季を題材に描いた。床の室礼は武者小路千家家元後嗣・千宗屋の監修。
「都季─TOKI─」の料理。下はフレンチコース「都季」¥32,890(税・サービス料込)より「鴨胸肉のアピシウス風」、上はフレンチと和の食材や調理法を融合したコース「庭屋一如」¥27,830(税・サービス料込)より「自家製スモークサーモン」。
千宗屋が監修するラウンジ横の茶居(ちゃきょ)では着物のスタッフが立礼式の点前で薄茶を出す。上質なおもてなしはホテルの強み。
堀川通沿いの客室からは二条城がすぐ目の前に。ラグジュアリーな客室のデザインはアンドレ・フー。パブリックスペースも担当。