妻ジュリアと寛ぐジオ・ポンティ、1957年。内装や家具は自ら手がけたもの。© Gio Ponti Archives
ジオ・ポンティは1891年、ミラノに生まれ、ミラノ工科大学を卒業後、1921年から建築に取り組み始めました。リチャード ジノリのアート・ディレクターを務め、デザイン誌『ドムス』を創刊。ミラノの超高層ビル「ピレリタワー」や、住宅、教会など建築の仕事の他、名作「スーパーレジェーラ」など家具もデザイン。展覧会は、ポンティの1921年から78年までのこうした多彩な仕事を、年代順に振り返る構成です。製品の他、プロジェクト別に、図面や模型も展示。実際の住宅やオフィスなどポンティが設計・デザインした空間や広告ビジュアルも添えられていて当時の雰囲気も伝わってきます。特にいくつかのプロジェクトのインテリアを床や天井に至るまで部分的にまるごと再現したコーナーは、ポンティによってそのスペースがどれほど豊かに彩られたか、改めて発見することが多い展示でした。モダンであるだけではなく、ときに華麗でときに温もりをたたえ、ときにユーモアもあり心が奪われるのです。
ポンティは生前、最も恒久的な素材はなんですか?と問われ「芸術です」と答えました。展覧会を通して響いてくる、偉大な建築家・デザイナーの織りなす軽やかな調べ……、巨匠が語った芸術がどんなものであったか体感できるような気がします。目と心に喜びを与え、心身がともに安らぐ建築・デザイン。生活の美の奥深さに気付かせてくれるところが、パリの人々を刺激しているのかもしれません。
天井の高さを活かして、オリジナルの家具と往時のインテリアや広告ビジュアルを展示。
ポンティが設計したモンティカティーニ社ビルのインテリアを再現。椅子やデスクもポンティがデザイン。
ポンティの自宅を再現したコーナー。オレンジ、黄色、白の斜めのストライプが入ったタイルでつくり出す温かな雰囲気はいま見ても新鮮です。
ポンティが設計したピレリタワーの模型も展示されています。
リチャード ジノリのためにデザインした『考古学の散歩』。ポンティは1923年にリチャードジノリのアート・ディレクターとなり、新古典主義に着想を得た芸術性の高いものを発表しました。
展覧会会場の入り口近くには、ポンティがデザインした家具に座ってひと休みできるコーナーもありました。これらはイタリアの家具ブランド、モルテーニによって復刻・製造されているものです。