ヘッドバーテンダーのジョシュア・ペレズ。ニューヨークで最先端のカクテルシーンを牽引してきた。日本産ウイスキーやジンにも造詣が深い。
エストとヴェルテュへのアプローチを兼ねるライブラリースペース。食にまつわる書籍や写真集が中心で、手前から奥にかけ日本、世界、フランスと並んでいる。
上質なリネンに包まれ穏やかな朝を迎えるのも捨てがたいが、できることなら日の出前に起きたい。早暁(そうぎょう)の空に紫のグラデーションがかかる瞬間は、静寂の中にピンと張り詰めた緊張感があり、息をのむほどに美しい。これまで見たことのない東京に出合えるはずだ。朝の日差しが、ビル群の合間を木漏れ日のように縫って皇居の森を照らす──それもこのホテルの立地だからこそ見られる景色。刻々とグリーンを明るく染め上げていく様子を、ビューバスに浸かりながら眺めるのもいい。
パノラマの絶景だけでなく、美食との出合いもこのホテルの醍醐味だ。日本各地の食材に新たな価値を付加する革新的なミシュラン・スターシェフ、ギヨーム・ブラカヴァルが腕をふるう「エスト」を筆頭に、3つのダイニングとバーを備える。夏にはオープンテラスから美しいサンセットや夜景を望める「ピニェート」は、本格的なピザ窯も構えたイタリアンダイニング。ティーソムリエがいる「ザ ラウンジ」では、スイーツとのティーペアリングや、日本茶の産地ごとの違いも楽しめる。
一日の締めくくりにぜひ訪れたいのが、バー「ヴェルテュ」だ。エストと共有するライブラリーエリアを抜けると、そこは「パリと東京が出合う」別世界が広がっている。ホテルのバーとしては珍しく、天井高が最大6m近くもある広々とした空間には、アール・デコ調のステンドグラスや家具と、江戸切子の職人が監修した照明や市松模様のタイルなどが共存。パリと東京の伝統が共鳴する場となっている。メニューには、「美徳」を意味する店名の通り、「仁」「義」「誠」など武士道に由来する7つの美徳にインスパイアされたオリジナルカクテルがあるところもにくい。
視点を変えることでいつもの風景も違って見えてくる。観光で訪れる人はもちろん、東京人が知らない「東京」に出合えるはずだ。
日本の酒や食材と、フランスのコニャックやスピリッツを掛け合わせるなど、カクテルには日仏の素材を使用。「桜尾」などの日本産ジンとシャンパンを合わせたシグネチャーカクテル「ヴェルテュ75」¥3,163(税・サービス料込)
左:7つの美徳に着想を得たオリジナルカクテル。右から、ノンアルコールの「梅の美」¥2,277(税・サービス料込)、電気ブランを用いた「宝」¥3,163(税・サービス料込)、国産ラムをベースにした「マダム ドゥ ポンパドール」¥3,163(税・サービス料込)
プライベートルームのペンダント照明は、「日本の伝統工芸士」に認定されている江戸切子作家の堀口徹が監修したもの。
ヴェルテュのデザインコンセプトを体現したアール・デコ調のステンドグラスは、野口真里が制作した。
エストとヴェルテュの内装はデザインスタジオ・スピンが担当。ソファ席とバーカウンターを備えたプライベートルームも完備。窓の向こうには東京スカイツリーの夜景も堪能できる。利用にはミニマムチャージが必要。
正面の市松模様のメタルアートは着物デザイナーの斉藤上太郎が監修。棚にはコニャックとジャパニーズウイスキーなどが陳列され、日仏の美酒の共演となる。