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“建具”のデザインで、
いずれは街を変えたい。
住宅設計を手がけることが多い建築家・藤田雄介は、住宅そのものだけでなく都市にどのようにアプローチできるかということに興味をもっている。建具や取っ手などのパーツを製造・販売するネットストア「戸戸(こと)」を始めたのは、その一環なのだという。建具は室内に取り付けるもの。それがどうして、都市と関係するのだろう?
「まず、建具は室内に“外部的””内部的”な空間をつくることができる。それを開けたり閉めたりすることで、距離感を調節することができます。そして設計した住宅で自分でデザインした建具を使い、さらに流通もさせることで、少しずつですが浸透していき、都市計画のような広がりが生まれたらと考えています」
「戸戸」の建具はオーダーメイドだ。しかし建具をはめる溝は規格化されているので既存の襖などをはめることもできる。また、季節や家族構成の変化に応じて建具を外したり入れ替えたりする、といった使い方も可能だ。建築設計では空間のつくり方をさまざまな方法で考えるが、引き戸の開閉によって空間の設えを変えるのは、日本古来の方法とも言える。
「ただしプロポーションなどは和風に寄せないようにしています」と藤田は言う。洋風のインテリアが主流になった現在、より普遍的なデザインを目指しているのだ。
さらに、いまは室内の建具が中心だが、外壁に取り付ける窓にも関心をもっているそうだ。
「窓の設えが変わると、都市の様相を大きく変えることができる。足立区の花畑団地の改修では防火などの基準をクリアすることができたので、あえて木製サッシを入れました。いまは初期コストもメンテナンスのコストもそれなりにかかりますが、今後もっと普及すればコストも下がって使いやすくなる。街を歩いた時の建物の表情が、ぐっと変化すると思います」
小さな建具を流通させることで、建築家の想定を超えた大きな広がりを見せてゆく。そんな動きまでも、藤田はデザインしている。
団地を改修した「花畑団地27号棟プロジェクト」。既存のスチールサッシを木製サッシに、さらにルームテラスを設置した。
photo:Kenta Hasegawa
マンションの改修「東松山の住宅」。半屋外的なスペースを周囲に配した入れ子的な構成で、ガラスや合板の框戸(かまちど)を使用。photo:Kenta Hasegawa