洋間にはテンピュール社のキングサイズのベッドを置いた。昔の襖が残されている他、森本の写真作品がプリントされた襖もある。
広々とした家で気兼ねなく寛げるのは、一日一組限定だからこそ。洋間の寝室を設けたり、雨戸と障子のみだった縁側にガラス戸をはめるなど、快適に整えられている。なかでも特筆すべきが青森ヒバの大きな風呂。青森ヒバはヒノキよりも香り成分が多く含まれ、殺菌力が高いと言われている。芳しい香りに包まれながら浴槽に身を沈めれば、ライトアップされた庭を望むうち、露天風呂のような心地にもなる。
お薦めの食事は美山の鹿肉や猪肉のバーベキューや、美山の特選鶏すきといった自炊食材セットのオーダー。冬季限定のぼたん鍋も美味い。豊かな水と大地を有する美山は、新鮮な食材の宝庫。その恵みを存分に堪能したい。
そして、この2月から蔵のフォトスタジオが始動。ポートレート撮影がおもなサービスで、まだフィルムのない1851年に発明された、ガラス板に像を写す「湿板写真」や、ポラロイドの画像を和紙に転写する「ポラロイドトランスファー」といった特殊な技法を使う。いずれも独特の風合いをもち、写真は一点ものだ。こうした技法で、プロの写真家に撮影してもらえる機会はそうそうないだろう。
霞たなびく山並みに川のせせらぎ、満天の星。美しい自然に抱かれ、土地の恵みをいただき、大切な人と語り合う。そんな帰りたくなる「田舎の家」に出合えたことが嬉しい。
大きさ1.2×1.1mという、大人3人が入れるほど広い青森ヒバの風呂。心地よい香りで癒やし効果抜群。窓の向こうにフォトスタジオにした蔵が見える。
トイレは和室と洋室の近くの2カ所に設置。鏡のフレームは廃材寸前だった掘り炬燵や箱火鉢の枠を救出し、再利用したもの。バルセロナから運んだ天板に、洗面ボウルはカタルーニャの陶器の街のもの。
南側の庭に面した和室は16畳で布団を敷いて寝てもいい。欄間の細工が見事。
森本は右肩に28㎜、左肩に35㎜レンズを装着した2台のライカM6をかけて撮影を行う。バゲは二眼レフカメラのルビテルを愛用。日当たりのいいこの縁側でポートレート撮影も行う。
蔵1階のスタジオ。湿板写真やポラロイドトランスファー、銀塩モノクロなどの撮影を行う暗室もある。
2階のギャラリーにはふたりの作品を展示。日本や世界各地を回って撮影した写真が並ぶ。購入可能。
この古民家の元の持ち主から提供してもらった古いモノクロ写真。ふたりは蔵に残されていた家具や道具、器なども家と一緒に受け継いだ。古いものが好きなふたりは大喜びし、宿や自宅で大切に使っている。スタジオの写真に映る屏風も蔵から出てきたものだ。
今回撮影した蔵と庭の写真。長い時を経ても変わらない風景にハッとする。
家を建てた家族が縁側で撮影した写真。森本は物件探しの時に、縁側でポートレートを撮る構想が湧いたという。元の家主も縁側での撮影が恒例だったそうだ。