建築家・坂茂(ばんしげる)さん、“建築界のノーベル賞”プリツカー賞を受賞しました!
建築界のノーベル賞ともいわれる、プリツカー賞。昨年(2013年)の伊東豊雄さんに続き、今年は坂茂(ばんしげる)さんが受賞しました! これまでに丹下健三さん(1987年)や槇文彦さん(93年)、安藤忠雄さん(95年)、SANAAの妹島和世さんと西沢立衛さん(2010年)が受賞しており、今回の受賞で日本人は6組目です。
坂さんは、銀座のオメガやブレゲ、ブランパンなどがショップを構えるニコラス・G・ハイエックセンター、成蹊大学情報図書館、フランスのポンピドゥー・センター・メスなどを設計し、国際的に活躍する建築家のひとり。素材、構造を巧みに使った理知的で美しい建築空間で知られますが、世界が彼の活動を高く称賛するのはもうひとつの理由があります。
1994年、ルワンダの内戦によって数百万人が難民となりました。坂さんは国連難民高等弁務官事務所に、紙管を使った避難シェルターの建設を提案。ルワンダでは多数の難民が周辺の木を切って仮設住宅をつくったことから森林破壊が深刻化、そうした背景から坂さんは木の代替材料として紙管を提案したのです。紙管は比較的安価で、輸送や組み立て、解体、再利用が容易。この利点を活かし、坂さんは以降、災害援助を積極的に行っていきます。
翌95年の阪神大震災時には、神戸に仮設の集会所「紙の教会」を設計。その後、この建物は解体されて台湾に送られ、エコツーリズムの拠点施設としていまも活用されています。
2008年の中国・四川大地震では骨組みに紙のパイプを使って小学校の仮設教室を、11年のニュージーランド・カンタベリー地震では被害を受けた大聖堂に仮施設を、同年日本で起こった東日本大震災では宮城県女川町に海上輸送コンテナを積み上げ、3階建ての応急仮設住宅をつくっています。今回の受賞も、自然災害などで壊滅的な打撃を受けて家を失った人々に自発的な活動を展開し、知識によって最先端の素材や技術を追求する姿勢が高く評価されたものです。
紙、竹や布といった素材を巧みに使い、革新的な構造を生む坂茂さん。その知恵が、世界で苦しむ多くの人々を幾度となく救ってきました。坂さんは「今回の受賞はこれからもこうした活動を継続していきなさいというメッセージだと思う」とプリツカー賞を運営するハイアット財団を通じてコメントしています。受賞はあくまで通過点、わたしたちにできる活動をあらためて考えさせてくれる素晴らしいきっかけになるのではないでしょうか。(Pen編集部)
Paper Refugee Shelters for Rwanda, 1999, Byumba Refugee Camp, Rwanda
Photo by Shigeru Ban Architects
Paper Church, 1995, Kobe, Japan
Photo by Hiroyuki Hirai
Container Temporary Housing, 2011, Onagawa, Miyagi, Japan
Photo by Hiroyuki Hirai
Centre Pompidou-Metz, 2010, France
Photo by Didier Boy de la Tour