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デザインの仕事は、自身が存在することの証し。
独自のカラースキームと、ピュアでクリアなデザイン表現が特徴的な白本由佳。今年のJAGDA新人賞の受賞は、白本にとってデザイナーとしてだけでなく、ひとりの人間として大きな成長を意味するものだった。
「子もちの女性が家で仕事をしているというだけで、主婦がパート感覚で片手間にやっているんじゃないかと思われたり、デザイン料をディスカウントされることもありました」
確かに3歳と6歳の2児の母であり、自宅を仕事場にしていることは間違いないが、白本にとって仕事は生き甲斐。プロとして意識も人一倍高い。
「JAGDA新人賞の受賞は、もちろんデザインに対して評価していただいたもの。でも私は自分が何者であるかという態度をきちんと表明できたような気がしています」
新村則人、植原亮輔、渡邉良重、マイク・エーブルソン+清水友理と、タイプの異なるアートディレクターのもとで経験を重ねることで、厳しさや緊張感をもってディテールを詰めてこそ、精度や持続性の高いデザインになることを覚えた。自宅で仕事をするようになってからはさらに集中力が増し、無駄なことをしなくなったと言う。
「子どもを保育園に預けている9時から18時30分までが私のビジネスタイム。それ以外の時間は仕事をしないようにしています。子どもが寝静まってからでもできるじゃないかと言われるかもしれませんが、そのほうが片手間になってしまう気がして」
ときに母としての時間をリアルに過ごしているところが、デザインに反映されることもある。
「絵本の読み聞かせをしている時や出かけている時など、私のデザインの源は、日常的に子どもと過ごす時間の中から生まれます。いたずらにも思える子どもたちの突飛な行動や自由な発想と対面すると、自分たち大人の考え方が既成概念で凝り固まっていることに気づき、びっくりしますね」
今後、子どもたちはどんどん成長していき、自分の仕事も忙しくなるかもしれない。それでも家族に寄り添いながら、一つひとつの仕事をしっかりと自分の手の中で守り、大切に育てていきたいという。そんな彼女にプロジェクトの大小は関係ない。自身が何者であるかの存在証明をしていくことが、デザインそのものである。白本のワークスタイルと人生哲学は、ずっとこの先も続いていくだろう。
自らイラストを手がけたというジュエリー作家Noriko Miyamo toのグラフィックワーク。
シンプルな平面構成ながら、絶妙な色の組み合わせを行ったエフカの菓子ギフトセット「Present for You」