千 宗屋キュレーションの『茶の湯の美』展で、国宝級の名品を道具として見る新体験を。
今年2月にリニューアルした熱海のMOA美術館。日本文化の至宝を、それらが生まれた前近代の光と場で鑑賞することをコンセプトに、現代美術作家・杉本博司 と建築家・榊田倫之が主宰する新素材研究所により設計されました。屋久杉や黒漆喰、畳などを使って生まれ変わったその展示空間で、武者小路千家・千 宗屋氏のキュレーションによる珠玉の茶道具コレクションを取り合わせた展覧会『千宗屋キュレーション 茶の湯の美ーコレクション選ー』が、2017年12月10日(日)まで開催されています。ガラスケースに陳列された美術品ではなく、茶室のしつらえのように、道具としての美しさや取り合わせの妙を味わえる、展覧会です。
たとえば、MOA美術館を代表する野々村仁清作の国宝『色絵藤花文茶壺(いろえふじはなもんちゃつぼ)』は、今回のリニューアルにより、黒漆喰で塗り込められた特別室に展示されています。もともと『色絵藤花文茶壺』は、口切(くちきり)の茶事に用いられる茶壺の形状を模して、飾り茶壺として制作されたものだそう。それにちなみ、口切の茶事に用いられる茶の湯の道具を展示するとともに、千 宗屋氏が監修した口切の茶事の映像を上映します。口切とは、茶人が一年で最も重きをおく炉開きにおいて行われる茶事で、新茶を詰めて寝かせておいた茶壺の封を切り、石臼で挽き立ての濃茶をいただくというもの。そうした背景や知識も含めて、茶道具として実際に使われていた情景に想いを馳せることができる、貴重な鑑賞体験となるでしょう。
他に、長次郎の黒楽茶碗「あやめ」などの名碗と掛け物を取り合わせた展示や、畳十畳敷、聚楽壁(じゅらくかべ)の大広間のような空間に、室町将軍家が収集した唐物絵画と道具を置き、中国から渡来した唐物を重用した茶の湯の世界を提示した展示も。また、秀吉の「黄金の茶室」を復元した空間での特別陳列や、美しい茶の庭での点心と喫茶など、催しも満載です。
晩秋のショートトリップに、風光明媚な熱海で、茶人の美意識に触れてみてはいかがでしょうか。
千宗屋キュレーション『茶の湯の美ーコレクション選ー』
開催期間:2017年10月27日(金)〜12月10日(日)
開催場所:MOA美術館
熱海市桃山町26-2
TEL:0557-84-2511
開館時間:9時30分〜16時30分 ※入館は16時まで
休館日:木 ※11月23日、11月30日は開館
入場料:一般¥1,600(税込)
www.moaart.or.jp