雑誌・広告業界が注目する写真家・石田真澄が、吉祥寺で4月29日より展覧会を開催
ファッション誌や広告写真の撮影を手掛ける石田真澄。彼女の写真家としての第一歩は中高一貫の女子校、クラス替え一度もなしという濃密な時間をともに過ごした友人たちとの日々が“もうすぐ終わる”ことを知り、狂おしいほどの渇望で日々を写真に収め始めたこと。その膨大な写真群を編集し、2018年1月に刊行したのが『light years -光年-』だ。
記録された刹那の輝きは、なにかが“いつか終わってしまうこと”あるいは“終わってしまったこと”を知る鑑賞者自身の記憶の中の光でもあった。そこに触れた多くの人の言葉や視線を通し、かつての日々を捉え直したことが、“特別な時間が終わってしまった”という思いの中にいた石田自身の迷いを照らす光となり、写真家としてのいまにつながっている。本作は長らく完売状態だったが、昨年から続く困難な状況の中で誰もが大切な人や場所と遠く隔てられた現在、再び多くの人に届けたいと増刷された。
時間は、記憶と現在地をどれほど隔てるのか。それはときにはゼロにも感じられ、またときには何千光年もの星間を飛ぶように感じられるかもしれない。そうした感覚の揺らぎの中にこそ、写真は見るものの居場所をつくるのではないか。そのひとつの現れとして、石田真澄の写真作品が4月29日から5月31日まで展示というかたちで届けられる。本展は5月中旬に展示内容が切り替わる2部構成。第1部“ripple”は、『light years -光年-』収録作品を本展のために再構成したものだ。時を経て遠く耳に届くさざなみ(ripple)のような思念に耳を澄ましながら、新たな向き合いと提示を行う。第2部“echo”は、石田は在籍していた学校を撮影のため再訪し、自分がかつて過ごし、いまはもういない場所に満ちる時間のこだま(echo)をレンズに収めたもの。それぞれの会期中にはオンラインでのトークイベントも行われる。