読み聞かせにぴったりな、親子の情を描いた絵本9冊
母子関係だけでなく、近年では父子を見つめる絵本も登場。父子を師弟に置き換えて「超えるべき壁」と捉えるのも、創作らしい視点だ。読み聞かせにもぴったりな9冊を堪能あれ。
『悲しい本』
悲しみに溺れそうになった時、裏腹な笑顔でごまかそうとする男の顔は、悲しいほどに歪む。愛息の死。底知れぬ悲しみの中で自暴自棄になりかけながら、必死に前を向こうともがく父親。堪えがたい現実に腹を立て、立ち止まっては哀れな自分を傍観するのは、著者自身なのだろうか? 徐々に感情移入していく読み手の思いと共鳴するかのごとく、ささやかな光をもって主人公に寄り添うロウソクの炎に、ぐっとくる。
マイケル・ローゼン 作 クェンティン・ブレイク 絵 谷川俊太郎 訳 あかね書房 2004年
『ちょっとだけ』
本当はママに甘えたい盛りの主人公、なっちゃん。4歳くらいだろうか。弟が生まれて世話に翻弄される、いつもと違うママの様子を子どもなりに察知し、なにかあるごとに「ちょっとだけ」頑張ってみる。甘えたい気持ちをぐっと抑えて母を気遣う姿がなんともいじらしい。そのことに気づいてあげられる親の愛情に読み手は深く安堵し、子へ愛情をはっきりと伝えることの大切さに改めて共感するはず。児童虐待事件など心塞ぐ話が多い、いまこそ読みたい本。
瀧村有子 作 鈴木永子 絵 福音館書店 2007年