2,000万円あっても足りない⁉「老後破産」のリスクを高める、3つのパターン
医療費が支払えず、病気があるのに病院に通うこともできない高齢者もいることをご存じだろうか。自宅で市販薬を飲んで痛みをごまかして暮らす悲しい老後だ。だが、これは他人事ではない。筆者に相談に訪れる人の中にも歯科治療費が払えず何年も仮歯で過ごし、仮歯が欠けたままの老女もいる。70歳以上の高齢者は、どのくらい資産を保有しているのか調べてみた。金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(2020年)によると、預貯金の残高平均は739万円だ。怖いと感じたのは、預貯金残高がないと回答している方が5.8%いて、さらに口座を保有していない方が2.3%、無回答の方が4.7%という事実だ。少なくとも70歳以上の高齢者の8%の方は、預貯金がないということになる。
預貯金だけでなく金融資産の残高の平均も見てみると2,208万円だ。中央値は1,394万円だから、お金を持っている人は、たくさん持っているが、全くお金がない人もいて貧富の差が激しいといえる。ちなみに、預金口座はあるが、残高がないと言う人を年代別に見ると20歳代は、0%、30歳代で31.6%、40歳代で18.8%、50歳代で31.0%、60歳代で6.8%となる。30歳代は住宅購入のタイミングと予測でき、50歳代は教育費のピークだらと予測ができる。老後資金と教育費は別途に平行して貯める必要があるのだが、50歳代で貯金残高がない世帯は、老後破産の可能性がグンと高くなる。
以前、筆者のメールセミナーを受講された方の感想で、悲痛な現状をお知らせいただいた事がある。60歳の時に貰った退職金で住宅ローンを完済し65歳まで働くつもりでいたそうだ。ところが62歳の時に耳の病気になってしまい働くことができなくなってしまった。その時の貯金は、子どもの教育費で使い切ってしまい、ほとんどゼロの状態。耳が聞こえなくてもできるアルバイトでなんとか食いつないでいるという内容だった。メールセミナーでもお伝えしているのだが、教育費を支払ったら貯金がゼロになってしまうようなら教育費でなく老後資金を優先して欲しい。預金を取り崩すのではなく、まず奨学金を利用すべきだ。奨学金は貸与だけでなく、給付型のものもある。また自治体によっては、大学費用などを低金利で貸し付けしてくれるケースもある。借りるあてがある教育費でなく老後資金の確保を優先することだ。感想をいただいた主も、その点を非常に後悔していた。
そして最もいけなかったのは、退職金で住宅ローンの返済をしてしまったことだ。退職金で住宅ローンを繰上げ返済して良かったのは、過去のバブル景気の頃のことだ。住宅ローンの金利は現在とても低いので退職金を温存して、老後の医療費や介護費用、住宅のリフォームなどにあてることも考えておこう。また、60歳で定年になると収入が激減する。定年後の再雇用制度を利用して働いても50代のときの半分以下、人によっては3分の1くらいまでダウンしてしまう。さらに、再雇用契約が65歳で終わり年金だけの生活になるともう一度さらに収入がダウンする。これは、緩やかに収入が減るのではなく、ある月からガクンと減るのだ。この点も考慮すると安易に退職金で住宅ローンを返済するのは危険だ。この60歳時の収入のダウンに合わせて収入の範囲内で生活できず、退職金もないとなると老後破産に片足を突っ込んでいる状態だ。