『ローガン・ラッキー』
監督/スティーヴン・ソダーバーグ
スティーヴン・ソダーバーグ復活! 崖っぷち兄弟の強盗計画やいかに。
森 直人 映画評論家映画監督業の引退撤回といえば宮崎駿……だけじゃなかった! ハリウッド映画の窮屈なシステムに見切りをつけてテレビ業界に鞍替えしたはずのスティーヴン・ソダーバーグが、わずか4年で復帰。早いよ!とツッコむ間もなく、これが観たら満面の笑みになるしかない傑作なのだ。
内容は一攫千金の強盗計画を描くケイパー・ムービー。となれば同監督の人気作『オーシャンズ11』シリーズを連想するが、しかしこちらのチームは犯罪のプロ集団ではなく、ほぼド素人の貧しい田舎者。保守的なアメリカ・ウェストヴァージニア州の小さな町で生きる下層の白人たちだ。
冒頭からジョン・デンバーの名曲「カントリー・ロード」についての薀蓄を小さな娘に傾ける無職のジミー・ローガン(チャニング・テイタム)。時にはザ・チャーリー・ダニエルズ・バンドのTシャツを着ていたりと、カントリー音楽の大ファンらしき彼は、片足が悪く、離婚とリストラで人生崖っぷち。弟のクライド(アダム・ドライヴァー)はイラク戦争で片腕を失ったバーテンダー。そんな兄弟が現金強奪の仲間に引き入れる伝説の爆破師を、ダニエル・クレイグが『007』の反動のような極悪仕様で怪演する。
ユーモラスな役者陣に加えて作劇がとても魅力的だ。爆弾魔ユナボマー、歌手リアーナなど雑多な固有名詞と与太話をちりばめつつ、ひねりを利かせた展開はタランティーノ調とも言えるし、リアン・ライムスが標的の場となるナスカーの巨大サーキットで愛国歌を熱唱するあたり、ロバート・アルトマン監督の『ナッシュビル』を思わせる諧謔も。脚本はレベッカ・プラントという新人の女性がクレジットされているが、実はソダーバーグ本人だという噂も!?
『ローガン・ラッキー』
監督/スティーヴン・ソダーバーグ
出演/チャニング・テイタム、アダム・ドライヴァー、ダニエル・クレイグほか
2017年 アメリカ映画 1時間59分