アナログ盤との濃密な時間を経て誕生した、テイ・トウワの鮮やかな10曲。
【Penが選んだ、今月の音楽】
ディー・ライトのメンバーとしてデビューして昨年で活動30周年を迎えたテイ・トウワの、10作目のオリジナル・アルバムが完成。CDの他、アナログ12インチでもリリースされる。
その内容は鮮やかなシンセやビートに彩られたトラックが計10曲。どれをシングル・カットしてもいいほどの卓越した出来栄えはさすがだ。また、作中の3曲を歌う女性ボーカリストHANAをはじめ、細野晴臣、高橋幸宏、清水靖晃、権藤知彦、伊賀航、KASHIFなど錚々たる面々が参加しているのも大きなトピック。ミックスはGOH HOTODA、マスタリングは砂原良徳とエンジニアも豪華な顔ぶれで、テイ・トウワのサウンドの魅力を余すことなく伝えている。
聞くと、制作は2019年から翌20年末まで。制作時はまさにコロナ禍で、DJのスケジュールはなくなり、旅行もできない。そんな中で、アナログ・レコードの魅力を再確認したという。
「レコードを聴く時間ってコーヒー・タイムと一緒で、生活の中でチャプターになってくれるんですよね。最近はジャケットを眺めたり、B面から聴いたりして。旅行ができない分、レコードで世界中を旅している感じです」
アナログ盤との濃密な時間は、新作へも影響を与えた。
「レコードの物理的な特性までを踏まえてアルバムをつくったのは初めてじゃないかな。アナログ盤でリリースすることを考えると、音質的には片面20分くらいがいいんです。だから曲数も10曲に。最後をビートがない曲にしているのも、アナログ盤を意識したもの。レコードって、内周側は低域が出にくいですから」
そうして完成したこの作品のタイトルは、ズバリ『LP』。いつか作中の曲がクラブで流れる日を楽しみに待ちながら、いまはゆっくりとアナログ盤で堪能したい。