ピピロッティ・リストの映像作品にどっぷり浸かれる展覧会が、京都でスタート

ピピロッティ・リストの映像作品にどっぷり浸かれる展覧会が、京都でスタート

文:Pen編集部

『わたしの草地に分け入って』 2000年(ヴィデオ・スチル)photo:© Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

身体、女性、自然、エコロジーなどをテーマに作品をつくり続けるスイスのビデオアーティスト、ピピロッティ・リスト。彼女の約30年の活動を紹介する展覧会『ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─』が京都国立近代美術館で開催中だ。

ピピロッティ・リストは2008年にニューヨーク近代美術館をはじめ世界各国の美術館で個展が開催され、日本国内では2007年に原美術館、2008年に丸亀市猪熊弦一郎美術館でも個展が開催されるなど、いま世界で最も活躍する女性アーティストのひとりだ。

『マーシー・ガーデン・ルトゥー・ルトゥー/慈しみの庭へ帰る』2014年(マルチチャンネル・ヴィデオ・インスタレーション)。写真はハウザー&ワース、サマセットでの展示風景だが、今回もこのように座ったり寝転んだりしながら鑑賞できるスペースが用意されている。photo: Ken Adlard © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

今回の展覧会では約39点の作品が展示されており、まるで自宅にいるようなリラックスした空間で映像を鑑賞できる。美術館はパブリックな場所である一方、作品と対峙するという意味でプライベートな場所でもある。美術館はプライベートとパブリックが干渉し合う実験の場であるとリストは考えており、作品を介して人々が出会い行き交うシェアハウスのようなスペースを設けたという。

展示室に入る前にまず靴を脱ぐ。カーペットの上に置かれた丸い円形のクッションに座り映像を眺めたり、まるでリビングのようなソファで遠目から映像を眺めたりと、さまざまな場所からじっくりと作品を鑑賞できる。同じ映像作品でも、座ったり寝転んだり、場所を変えたりすることで違った印象を受けるから不思議だ。

『4階から穏やかさへ向かって』 2016年(3チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション/ベッド、枕)。ベッドに寝転びながら鑑賞できる。写真はオーストラリア現代美術館での展示風景。 photo: Anna Kucera © Pipilotti Rist, All images courtesy the artist, Hauser & Wirth and Luhring Augustine

展示室の家具にはBKFチェアが使われていたりと、リストのセンスが詰まったインテリアにも注目したい。デンマークのテキスタイルメーカーのKvadrat(クヴァドラ)は、以前からリストとコラボレーションを重ねてきた。今回の展覧会では、「Waterborn」や「Revive」など、環境に配慮したサステナブルなテキスタイルが900m以上、展示のカーテンやクッションなどにふんだんに使用されている。インテリアのスタイリングも作品の一部であり、実際に座ったりできるのが嬉しい。

最近ではスマートフォンなどから、いつでもどこでも映像を楽しめるようになった。しかし鑑賞するための空間や、そこにいる人など、想像以上に私達は「リアル」に左右されていることに気付かされる展覧会だ。京都国立近代美術館では6月13日まで、8月7日からは水戸芸術館 現代美術ギャラリーに巡回予定。ぜひ一度体感してみてほしい。


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『ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─』

開催期間:2021年4月6日(火)~6月13日(日)
開催場所:京都国立近代美術館
京都市左京区岡崎円勝町
TEL:075-761-411
開館時間:9時半~17時 ※金曜・土曜は20時まで、入館は閉館の30分前まで
休館日:月 ※5月3日は開館、
入場料:一般¥1,200(税込)
※展示室内にはカーペットがない場所もあり、靴下と靴袋を持参するのが望ましい。臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。
https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2021/441.html

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