あらゆる境界を超えていけ! 『横尾忠則 HANGA JUNGLE展』で、走り続ける創作の雄叫びを聴く。
東京・町田市国際版画美術館では、横尾忠則の版画制作の大回顧展『横尾忠則 HANGA JUNGLE展』が絶賛開催中です。
1960年代、アングラ演劇のポスターに妖しさ漂うエロティックな表現で一大ムーヴメントをつくり、先進的デザイナーとして脚光を浴びた横尾は、同時に版画制作も積極的に行い、パリでの青年ビエンナーレ版画部門をはじめ多くの受賞も果たし、国内外で高く評価されてきました。1982年の「画家宣言」の後、ペインティングに注力するようになりますが、併行して版画作品も引き続き制作しています。
現在の新作を含む、ほぼ全版画に相当する約230点に、ポスター約20点を加えた250点強の版画で魅せる圧倒的な内容は、彼の創作活動の全貌に迫る展覧会です。それらの成果は常にラディカルに、ショッキングにわたしたちの感覚と認識を揺さぶります。ポスターも単なる広告メディアとしてではなく、彼の版画創作のひとつの形として紹介されるのがポイント。だから「版画」ではなくて「HANGA」。「版画」の枠を超えた、その型破りなスケールにぴったりの、世界に通じる言語として名づけられています。
もうひとつのポイントが、横尾の表現の多様性を存分に堪能できる展示空間。冷静な現代への視座を持ちつつも、直観と衝動を原動力にする彼のエネルギーあふれる作品群が、これでもか、というくらいに部屋の壁を埋めつくします。あるところでは大版画が列をなし、あるところでは段違いにひしめき、あるいは、二段重ねで堂々と、目くるめく総天然色の世界が現れています。だから「JUNGLE」。とどまることなく次々と創作スタイルを変えていく作品たちが、まるで複雑な生態系を示すジャングルにも思えてくる、絶妙な命名と造りです。ここには、横尾が幼い時から憧れた「ターザン」への想いも重なります。
全7章、時系列を基本に巡る会場は、時代や環境により移っていくアーティストの意識や興味が浮かび上がり、あふれる生命感の中に、ユーモアとエロス、まじめとふまじめ、享楽と批判が混在しつつ、新たな表現を模索する創作への熱量に満ちています。そしていずれの作品からも感じられるのは、グラフィックとアート、複製とオリジナル、写真と絵画、エロと官能、低俗と高尚、自然と肉体、過去と現在・・・あらゆる境界を揺さぶり、打ちこわし、概念の在り方を問いかける、横尾の視線です。ジャングルを走るターザンのような、鋭くたくましい横尾の雄叫びを、極彩色の作品に聴いてみませんか?
「横尾忠則 HANGA JUNGLE展」
開催期間:~6月18日(月)
開催場所:町田市立国際版画美術館
東京都町田市原町田4-28-1
開館時間:10時~17時(土・日・祝日は17時30分まで)(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜
TEL:042-726-2771
入場料:¥800