話題沸騰の展覧会『ライゾマティクス_マルティプレックス』で、リサーチと開発、アートとエンタテインメントの横断を体感する。
2021年に設立15周年を迎えたライゾマティクスの個展が、東京都現代美術館でスタートした。プログラミングを駆使したPerfumeのライブの演出技術開発や映像制作、ビョーク、スクエアプッシャーなどとのコラボレーション、さらにはフェンシングの剣先の動きを可視化するプロジェクトや、ビットコインの自動取引ソフトを開発し、その動きを分析して音とビジュアルに融合させる取り組みなど、メディアアートや広告クリエーションなどの枠組みを超え、技術と表現の新しい領域を拡張し続けてきたライゾマティクス。その名前は、ひとつの概念に由来する。
フランスの哲学者、ジル・ドゥルーズと精神科医のフェリックス・ガタリの共著『千のプラトー』で展開した「リゾーム」という概念だ。絶対的な軸があり、そこへの二項対立で物事を判断する従来の西洋の思想や社会価値観の形成に異議を唱えた彼らは、異質な線が交錯し、多様な動きが網状組織として広がるイメージに発想を転換すべきだと、新たな思想の象徴として「地下茎」を意味するこの言葉を用いた。中心も始まりも終わりもなく、発想や技術、経験値が関係し合うことで可能性が無限に広がるイメージが、ライゾマティクスの名には込められている。
「我々の活動には、データビジュアリゼーションがあれば、ダンサーにセンサーを付けたりするパフォーマティブなものがあったり、私が個人で発表している脳活動などのデータを扱うものまで多岐に渡るので、どうまとめるかが課題だった」と語るのは、中心メンバーのひとりである真鍋大度。
そこで彼らが展示の冒頭にもってきたのが、15年間で手がけた約600件のプロジェクトにメタデータをつけ、自動でイメージが展開する樹形図をインスタレーションとして提示する『Rhizomatiks Chronicle』だ。ここで膨大なデータの波に圧倒されてから、個別のパフォーマンスやインスタレーション、新しい表現の獲得や諸問題の考察のために行われている『R&D(リサーチ&ディベロップメント)』、さらには、会場の展示と関連づいてオンラインで展開する『ライゾマティクス_マルティプレックス』展までを満喫してほしい。テクノロジーの探求、社会や環境、生命への問題意識、エンターテインメントの可能性など、あらゆる興味が有機的に結びついてライゾマティクスの活動が続けられてきたことを体感できるはずだ。
ライゾマティクス_マルティプレックス
開催期間:2021年3月20日(土・祝)〜6月20日(日)
開催場所:東京都現代美術館 企画展示室B2F
東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
TEL:03-5245-4111(代表)、050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜18時
※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月(5月3日は開館)、5月6日
入館料:一般¥1,500
※予約優先チケットあり
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/rhizomatiks/
https://mot.rhizomatiks.com/(オンライン会場)