柳宗悦がデザインした空間を新たに再現。リニューアルした日本民藝館で愛でたい、とっておきのコレクション
東京・駒場の閑静な住宅地を歩いていると、大谷石と白壁に囲まれた蔵造り風の建物が目に飛び込んでくる。それが暮らしの中の日用品に美を見出し、民藝運動を牽引した柳宗悦によって建てられた日本民藝館だ。本館の玄関横にある小窓で受付を済ませ、重厚な引き戸を開けると、樫の木の大階段のある吹き抜けが待ち構えている。いずれも柳の美意識に基づいてデザインされ、1936年の開館当初をほぼ留めた姿だ。柳の活躍した時代へとタイムスリップした気持ちにさせられるかもしれない。
現在開催中の『日本民藝館改修記念 名品展I』にて公開されているのは、日本の焼きものや沖縄の染織、朝鮮の木工品といった民藝館の優品だ。全てが障子や葛布の壁に囲まれ、朝鮮風を加味したとされる木の陳列棚の並んだ展示室と調和している。床のきしみを足に感じつつ朱色字の解説札を読むのも、同館ならではの独特な鑑賞体験だろう。長崎で作られた色鮮やかなガラス『色替唐草文六角三段重』など、思わず手に取りたくなるほどに愛おしい品々に心を奪われてしまう。
今年4月、本館奥へと続く新館二階の大展示室がリニューアルを遂げた。同館では昨年11月末より改修工事のために一時休館。トイレなどの設備面が更新されたが、大展示室にも大きく手を加えられ、柳が設計した旧大広間(現在の豊田市民芸館第1展示室)を踏襲したスペースに生まれ変わっている。かつて木で覆われていた床は明るい色合いの大谷石に改められ、壁には本館と同様に葛布が貼られた。さらに米松の板を合わせた展示台のある大型のガラスケースも設置され、伝統と現代的な展示機能を見事に融合させている。もし日本民藝館を「美の殿堂」として築いた柳が見たら、きっと喜ぶに違いないと空想してしまうほどだ。
大展示室のお披露目を兼ねた今回の名品展は内容と時期を替えて二回行われる。まず『朝鮮陶磁・木喰仏・沖縄染織などを一堂に』を6月27日まで開催。その後、7月6日から9月23日までは『近代工芸の巨匠たち』と題し、バーナード・リーチや河井寛次郎、芹沢銈介らの作品が展示される。そのうち芹沢は柳と親しく交流し、日本民藝館の門柱にかかる看板の筆をとった人物だ。とっておきの民藝コレクションを『日本民藝館改修記念 名品展』にて味わい尽くしたい。
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