アーティストの感性と職人技が出合った、『眠らない手』エルメスのアーティスト・レジデンシー展の魅力とは。
銀座メゾンエルメス フォーラムで現在、「眠らない手」エルメスのアーティスト・レジデンシー展が開かれています。この展覧会は、エルメス財団の若手アーティスト支援プログラムの成果を発表するもの。2014年から2017年までの間に参加した9名の作家の作品を、2期にわたって展示します。
この支援プログラムは、「メンター」と呼ばれるベテランのアーティストが、1対1で若手作家を指導するのが特徴。さらに皮革、シルク、銀などエルメスの工房で働く熟練の職人が、アイデアをかたちにしていくのを手伝ってくれるのです。「生徒」となるアーティストが先輩アーティスト、経験を積んだ職人というふたりの「先生」にサポートしてもらう形です。制作や発表の場を提供する、あるいは資金を提供するといったタイプの支援プログラムはよく見かけますが、「人」によって制作過程を支援する点はとてもユニークなものではないでしょうか。
9月13日(木)から始まった「Vol.1」には4人の作家が登場します。セリア・ゴンドルの作品は宇宙物理学にインスピレーションを得た、長さ40メートルものテキスタイル。「天体の意義を通じて、人間の存在とは何かを問いかけるもの」と作者は説明します。DH・マクナブは各国のガラス工房で、ガラス表現の可能性を探究しているアーティスト。サンルイ・クリスタルで溶鉱炉からヒントを得たものや、自分の息を海中のバブル・リングのようにガラスの中に封じ込めた作品を制作しました。
クラリッサ・ボウマンはピュイフォルカとコラボレーション、銀のスプーンを引き延ばし、長い1本のワイヤーにしてしまいました。小さなスプーンから生まれたワイヤーは、職人たちも驚くほどの長さになっています。ルシア・ブルもピュイフォルカで白い磁器とクリスタルを素材にした小さなキューブによるインスタレーションを制作。あわせて過去に制作した、ボールペンと鉛筆で画面を塗りつぶした作品を展示しています。膨大な時間をかけた手仕事による作品は、「眠らない手」という展覧会タイトルにふさわしいものでしょう。11月15日から始まる「Vol.2」では5人の作家が作品を展示します。
先輩のアーティストという同業の先生と、職人という近いけれども異業種の先生とのコミュニケーションは、プログラムに参加したアーティストにとって大きな財産となったはず。アートの可能性を広げるものとしても、大きな意義のあるプログラムです。
「眠らない手エルメスのアーティスト・レジデンシー展
開催期間 Vol.1:2018年9月13日(木)〜11月4日(日)
Vol.2:2018年11月15日(木)~2019年1月13日(日)
開催場所:銀座メゾンエルメス フォーラム
中央区銀座5-4-1 8階
TEL:03-3569-3300
開館時間:11時〜20時(月~土、最終入場19:30) 11時~19時(日、最終入場18:3)
不定休(エルメス銀座店の営業時間に準ずる)
入場無料