「使い手と一緒につくるというスタンスを取り入れることで、つくり方も、その後の使われ方にも変化が生まれる」と語る建築家の岡野。
コミュニティとのつながりを大切にする建築家の岡野は、自身のこれまでの家づくりの経験を通して、新しい時代のモノづくりについて語る。「たとえば一緒に壁を塗る。床材のタイル張りを一緒に手伝ってもらう。それだけで、単に与えられたものを使うという使い手としての意識と少し変わり、『これは私のつくった家だ』と愛着をもってもらえるケースが多いんです」
被災地の復興拠点や地域のコミュニティづくりなど、建築の枠を広げる活躍をする岡野の話にふたりも耳を傾ける。
つくり手と使い手という一方的なコミュニケーションではなく、一緒につくるというスタンスが少しでもあるだけで、つくり方も、その後の使われ方にも大きな変化があるという。「これからの時代は、デザインするプロセスに人を巻きこんで、一緒にものごとをつくっていく。そんなモノづくりが求められていくのでは」という彼女の言葉に、横関、館鼻のふたりも納得の表情を浮かべていた。
やわらかな表情で語る岡野には、子どもをもつ母としての一面も。
新型Audi A3の最新テクノロジーとドライバーを中心に設計されたデザインの融合を実際に肌で感じた3人は、さらに、デザインという概念の「進化」について語り合う。新型Audi A3について、引きで見ても寄りで見てもデザイン的な魅力があると、そのスポーティなフォルムの進化にすっかり惚れこんだ横関。その様子を見て、岡野は「進化って、数字だけでは表現できない。その奥にアイデアや、機能に裏づけされた工夫があるからこそのもの」と、デザインの進化について自身の考えを述べた。
「クルマは動く居住空間」と、カーデザインとは異なる岡野の目線が、新たな発見を紡いでいく。
「まさにクルマは動く居住空間。見た目やフォルムの印象とともに、その中の空間をどうカタチづくるかということはクルマも建築も同じで、とても共感できます」と話し、自身の手がける住居の設計と、アウディの空間デザインへのこだわりに共通点を見出すことで、新たなインスピレーションを得た。使う人からのフィードバックを受けることで、よりよい設計につなげていく。岡野のモノづくりへの柔軟な姿勢が窺える瞬間だった。
クルマ×プロダクトデザイン、建築、 アート。かつてない出合いから生まれたアイデアとは
持ち寄ったデザインスケッチを前に語り合う3人。新型Audi A3が、三者三様の視点によって、また別のデザインへと進化していく。
クルマとは異なるフィールドで活躍する彼らは、新型Audi A3のデザインをどう解釈したのか。そのイメージを言葉ではなく、まさにそれぞれの「デザイン」で表現したとしたら? そんな難しい課題にも3人は快く応じてくれた。
「家の中に新型 Audi A3を取り込むということができたら」という、プロダクトデザイナーならではの視点から生まれた横関のフラワーベース。
横関が披露したのは、既にプロトタイプのレベルにまでCGで落とし込まれた一枚。エアインテークやシングルフレームグリルをモチーフにしたフラワーベースは、ボディの端材を再利用することでサステイナビリティにも配慮した作品。
舘鼻は代表作のヒールレスシューズのフォルムに、新型Audi A3の立体的なフォルムから得たファーストインプレッションを見事に反映させた。
舘鼻の代表作でもあるヒールレスシューズに、新型Audi A3の「ミニマルでありながら複雑でシャープ」なフォルムを重ね合わせたアイデアスケッチ。
事前に新型Audi A3を試乗していた岡野は、特に印象深かった加速の心地よさからインスパイアされたという、多重螺旋の住宅建築を提案。クルマやクルマ以外のモビリティのための導線と居住空間がスパイラルで構成される、未来感あふれる建築デザインに驚きの声が上がった。
クルマ×プロダクト、クルマ×建築、クルマ×アート、クルマ×建築、とクロスジャンルと呼ぶにふさわしいこれらのアイデアに、デザインのさらなる可能性やその進化の行く末が示唆されているのではないだろうか。
モビリティ用のレーンと住戸のレーンが多重螺旋を描く岡野の住宅建築のアイデア。人とモビリティの共生という未来的なテーマが感じられる。