平成を写真で振り返る、「コミュニケーションと孤独 」展で思いを巡らせてみませんか?
東京都写真美術館では開館20周年記念展が続々と企画されています。なかでも「平成をスクロールする」は春、夏、秋期の3期に分かれてそれぞれのテーマで平成時代を写真で振り返ろうという意欲的な試み。現在は夏期「コミュニケーションと孤独」が開催中です。本シリーズはコレクション展、つまり美術館が収蔵する作品でつくられています。20年かけて集めてきた収蔵作品はおよそ3万4千点。今回はその中から「平成」以降の作品が展示されています。
「由来があって入ってきた作品たち。このシリーズでは3人の学芸員が各期をそれぞれ担当しました。コレクションをどうやって見せていくかは個性が発揮されるところ」とは本期を企画した学芸員の武内厚子さん。膨大なコレクションからどうやって展覧会はつくられているのでしょうか?「私の場合、先にテーマありきでした。平成になってから出てきたこととして、コミュニケーションのはかり方の変化に着目しました。たとえば不登校や孤独死の問題等、多くはコミュニケーションと表裏一体に孤独があるということを考えさせます」。
今回、郡山総一郎の作品『Apartments in Tokyo』だけは、唯一本展のために新たに収集したとのこと。本作は孤独死を遂げた人の部屋を撮影したシリーズです。テレビやネットのニュースで私たちが目にする「孤独死」という言葉からは、辛さや寂しさという印象ばかりが先行しますが、郡山の作品から伝わるのは、死の直前まで日常生活が続いていたことがわかる、生々しい生活空間そのものでした。
ひょっとすると平成のコミュニケーションの問題というのは、増える情報量に比して、同時に知らないことも増大したことに起因するのかもしれません。そんな中、写真家たちは言葉のもとにある現場や人や物に実際に会い、さまざまな方法で生の証言を集めていたのです。だからこそ、写真を通じると、私たちは実際は考えたことがなかったことについて、理解を進めることができるのでしょう。本展には、北島敬三、中村ハルコ、やなぎみわ、森村泰昌、石内都、大塚千野、オノデラユキ、ホンマタカシ、菊池智子、高橋ジュンコ、林ナツミ、屋代敏博、津田隆志、郡山総一郎の作品が出品されています。それぞれの作品の背景に作家の意図を探りながら、静かな美術館で思考を巡らせるのも、夏休みの有意義な過ごし方かもしれません。
総合開館20周年記念TOPコレクション「コミュニケーションと孤独」平成をスクロールする 夏期
開催期間:〜9月18日(月・祝)
開催場所:東京都写真美術館 3階展示室
休館日:月曜(ただし月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館)
入場料:一般 500円
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2774.html