新生GYRE GALLERYのリニューアル第1弾は、『デヴィッド・リン...

新生GYRE GALLERYのリニューアル第1弾は、『デヴィッド・リンチ_精神的辺境の帝国』展。

写真・文:中島良平

展示室のひとつの中央には、デヴィッド・リンチの映画のセットに出てきそうな小屋が設えられ、中では新作の短編映像が上映されています。

表参道の商業ビル「GYRE」のギャラリーが、「EYE OF GYRE」から「GYRE GALLERY」へ名前を変えて4月19日にリニューアルオープンしました。その企画展第1弾として6月23日まで開催されているのが、『デヴィッド・リンチ_精神的辺境の帝国』展です。スクールデレック芸術社会研究所所長でインディペンデント・キュレーターの飯田高誉さんが映画監督のデヴィッド・リンチと話し合いを重ねて選定した、計44点のペインティングや水彩画、写真作品が展示されています。

1990年を前後してセンセーションを巻き起こしたTVドラマ『ツイン・ピークス』、2000年代には幻想と現実の境界が曖昧になった『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』などで圧巻の表現世界を確立したリンチ。ペンシルヴァニア・アカデミー・オブ・ファイン・アーツで絵画を学んだ彼は、学生時代に「絵画を動かしてみたい」という思いから奨学金を得て、デビュー作となるカルト作品『イレイザーヘッド』を手がけました。今回の個展では、その映画ロケが行なわれたフィラデルフィア工業地帯にインスパイアされた作品の数々をセレクト。今回で5度目となるリンチの個展を企画したキュレーターの飯田さんは、リンチとの出会いについて次のように語ります。

「フジテレビギャラリーに勤めていた1980年代に、初めて映画館で『イレイザーヘッド』を見た時には打ちのめされました。グロテスクですし、もう2度と見たくないと思ったんです。しかし、VHSが発売されると、なぜか無意識のうちに高いお金を払って買っていました。自分でもなぜだかわからないのですが、家に帰って夜に見てみると、止められなくなってしまった。仕事もしていますから、1日10分ちょっとずつ1週間で見終わるペースで毎日見て、その習慣が3年間休まずに続きました。もう映像と音の虜になってしまったんですね」

特設された小屋では、リンチ映画さながらに焼け落ちた屋根を演出。するとリンチからは偶然にも、『FIRE』と題する新作映像が届いたのだといいます。

『SMOKER HEAD』(2011)と題された作品を前に、展示の説明をするキュレーターの飯田高誉さん。「アイデアの原点とも呼べるようなイメージをドローイングにまとめ、そこから作品の世界観を展開するのがリンチの手法です」。

GYRE GALLERYが位置するのはGYREの3階。空間デザインをJTQ谷川じゅんじ、設計を建築家の古代裕一とトーマス・ヒルデブラント、ロゴデザインはvillage®︎長嶋りかこが手がけました。

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