「見る」ために出かけたい、映像作家フィオナ・タンの大規模個展。
展覧会のタイトルにある「まなざし」とあるように、彼女の作品は「見る」ことや「視線」を意識させます。『ディスオリエント』はマルコ・ポーロが東方への旅で見たものや集めたものを収めるミュージアムがあったら、という想定の作品。撮った映像と古い記録映像で紡ぎだされる作品は、マルコ・ポーロという希代の旅人の目と、作家の目を意識します。フィオナ・タンの家族や周りの人々の映像によるポートレートシリーズ『プロヴィナンス』は、被写体へのまなざし、そして被写体の目は何を見ているのか、静かな関係性が親密さを感じさせる作品です。アジアで初公開される『インヴェントリー』は、35ミリフィルムやヴィデオなど異なる6つのメディアで、イギリスの建築家ジョン・ソーン卿(1753~1837)の個人博物館を撮影し、6面を使った映像インスタレーションとしてつくりあげた作品。そこかしこに古代ローマの柱の装飾や彫刻などがある濃密な空間を映像の質感が異なる6つのメディアで映し出した作品は、6つのまなざしで織り上げられた織物のようにも思えます。
フィオナ・タンの繊細なイメージは、ふだん形をとらない「まなざし」の軌跡なのかもしれません。「見る」という行為から派生する、さまざまな感情や反応に気付くことは、アートの根本のひとつでもあります。
展覧会会期中は1階ホールで『フィオナ・タン ドキュメンタリー作品上映』も開催中。時間をゆっくりと取って「見る」ことをお薦めします。
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図版はすべてCourtesy of the artist and Frith Street Gallery, London; Wako
Works of Art, Tokyo
『フィオナ・タン まなざしの詩学』
7月19日 (土) ~ 9月23日 (火・祝)
東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
開館時間:10時~18時
(~9/19の木曜・金曜は21時まで、いずれも入館は閉館30分前まで)
※1階ホールでの『フィオナ・タン ドキュメンタリー作品上映』は作品ごとに上映時間が異なる。
休:月(月曜が祝日の場合は開館し、翌火曜休館)
料金:一般¥900
www.syabi.com