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毎日いいね!が付く、
ミニチュアで描く「景色」。
http://miniature-calendar.com
身近なモノとミニチュア人形を使って意外な〝景色〞を生み出し、SNSなどで作品を発表する田中達也。肩書は「ミニチュア写真家」を名乗る。「子どもの頃からプラモデルやイラストが好きでした」という田中。大人になってデザイナーとして働くかたわら、趣味で写真を撮り始めた。
「きっかけは2010年に登場したインスタグラム。写真について詳しく知ることで仕事相手のカメラマンに、構図などの指示を出せたらいいなという気持ちもありました。当時『いいね!』をもらっている写真は、モデルを使ったものが多かったんです。被写体がいたほうがいいけれど、モデルを使う余裕はない。そこで浮かんだのが、プラモデルに添えるためにもっていた人形でした」
ブロッコリーを並べて横に人形を置けば、森に見える。レールの上にコッペパンを置けば列車に……。そんな写真を「ミニチュアカレンダー」と題して毎日アップすると評判が拡散。SNSのフォロワーは100万人を超え、国内外で個展も開かれるように。今年はNHK朝ドラ『ひよっこ』のオープニング映像を手がけてさらに話題になった。
「普段、見ているものが違うなにかに見えた時に、『いいね!』の数が伸びたり、コメントをもらえたりする。だからいいアイデアは、たくさんの人の行動範囲内である、スーパーやホームセンターで浮かぶことが多いです」
いまや広告や企業コラボのオファーも多く、ミニチュア写真は「商品」でもある。それでも毎日無料でインターネット公開を続けるのはなぜか。
「ひとつは営業のため。もうひとつは練習のためです。スポーツ選手が身体を鍛えるように、見立ても毎日考えるから思考が鍛えられて、いいアイデアが出やすくなる。それに、出し惜しみしたらダメなんです。たとえばブロッコリーを木に見立てるなら、思いつく限りをやり尽くす。『これ以上ない』と思っていた時に出た2段階目のアイデアが、すごく面白かったりするんですよ。だからアイデアは容赦なく使って、一回、全部枯らした方がいい」
昨年はミニチュアの枠を超えた大型の見立て作品にも挑戦。VRなどにも意欲を燃やしている。鍛えた「見立て力」を武器に、ますます活躍の場を広げそうだ。
NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』のオープニングのタイトルバックを、映像ディレクターの森江康太とのタッグで制作した。
個展『MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界』では「新パン線」の実物が走る。新宿髙島屋で9/1~12、大丸梅田店で9/20~10/20開催。