Creator’s file
ルールを壊しつつ、新しい世界を見せたい。
福永浩平は、〝雨のパレード〞という4人組ロックバンドのリーダー。雨のパレードはペインター、ジュエリーデザイナー、衣装デザイナーの3名も所属する創造集団でもあり、彼はその主宰者でもある。結成のきっかけはこうだ。
「上京したら、数え切れないバンドの中でどうやったら注目されるんだろう、しかもCDが売れない時代に、CDを買わなくなってしまった人たちに目を向けるだけでなく、買わなかった人たちをどうやったら振り向かせられるんだろう、と考えたんです。僕はもともといろんなカルチャーに興味があるので、別のカルチャー畑の柔軟な人たちからもCDを買ってもらえるようにしたいと思い、それならそういう畑の人たちを自分たちの集団に組み込んでいけば注目される存在になれるんじゃないかな、と思って始めました」
母方の祖父は音楽の先生をしていたので家には楽器があふれ、服飾学校を卒業した祖母はイラストを描き、いまでもセットアップを縫製し送ってくれるという。両親は合唱部出身で、父はジャズも好きだった。そんな環境で育った福永は、曲を作る上に絵も描き、服への興味も強く、CDのアートワークや舞台美術など全部手がけたいという思いももっている。
いまはまず音楽での成功を目指している。仲間のクリエイターとはメンバーのバイト先で出会ったほかに、行きつけの古着屋からファッションショーの音楽を頼まれ、その「Mo-Up」というイベントの中で知り合っていった。
「まだ活動としては始まったばかりなんですけどね。去年つくった曲の『new place』という言葉が僕にはしっくりきてて、受け手には、〝いままでこんなの聴いたことないでしょ?見たことないでしょ?感じたことないでしょ?〞といった新しさみたいなものを提示し、感じてもらいたいですね」
昨年末に行った自主企画のテーマは《呼応する表象》。ZINEも制作し、「今後、僕らはどんな形になっていくかを抽象的に描いてみた」という。 子どもの頃から好奇心旺盛で、「美術の時間など、みんながやりたがらないことをやりたいと思ってやってきた。いまでも与えられたルールの中で、そのルールも壊しつつ、見せていけたらと思っています」と、話す。柔和な表情に野心が見え隠れする。今後の活躍に期待したい。
2015年12月20日に代官山LOOPで開催された自主企画イベント「呼応する表象」。ファッション関係者も多く集まった。photo:Daisuke Miyashita
2015年3月27日に渋谷O-nestで開催された第1回目の自主企画イベント「漂白する都市」の模様。演奏のほかに展示も行った。