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ほかと同じでは負ける、常に人と違うことを。
「J ‒POPシーンにいるミュージシャンは〝いい歌詞といい音楽を届けたい〞ってみんな思っているはず。でも僕はJ ‒POPを昔からつくってきた人間ではないし、コムアイも凄い歌唱力をもっているわけではない。〝みんなと同じことをやったら負けちゃうな〞と思ってやってきていますね」
ケンモチヒデフミは〝水曜日のカンパネラ〞という3人組ユニットのサウンドプロデューサー。主演/歌手担当のコムアイは、ヤフオク!のCMに出演するほか、雑誌やWEBのコラムなどでも注目を集めている。ケンモチの書く奇抜な歌詞と秀逸なトラックによる楽曲がコムアイの歌で引き立ち、もしくは彼女のキャラを際立たせ、何でも屋というDir.Fによる映像やアイデアが、そのインパクトをさらに強烈なものにしてきた。
子どもの頃はゲームに付随するインストの音楽が好きだった。高校在学中にBUCK ‒TICKの〝人と違うことをやっているのがカッコいいんだ〞といったスタンスに触発され、打ち込みに夢中になるうちに、ドイツ系のミニマルテクノに傾倒。会社員をしながら音源を製作するようになり、そのCDを聴いたDir.Fから女の子をボーカルにしたユニットの結成に誘われた。彼自身、ちょうど歌ものに興味をもち始めた頃だったという。
「ずっと歌ものには興味がなくて暗い音楽が好きだったのに、震災の後にもっと明るい音楽を聴きたい時期が来て、宇多田ヒカルさんや相対性理論、ハナレグミなどを聴き、純粋に歌のメロディと日本語がこんなに気持ちのいいものなのか、と気がついたんです」
歌詞を書いたことはなかったが、「中学生の時に小説を書いていた」と明かす。その才能が30歳過ぎて開花した。「歌の主人公を人物にする」というコムアイのアイデアをきっかけに、「マリー・アントワネット」という曲では、「歴史上の人物マリー・アントワネットが現世に来てOLとなり、仕事で疲れて、週末におひとりさまでプチ豪遊するという設定」など、ストーリーが次々と浮かんだ。パズル好きだったことも、言葉遊びに功を奏した。
「僕が聴いてきた濃い音楽や自分ひとりでは届かなかったことを、Dir.Fが考える面白いことやコムアイのぶっ飛んだキャラに委ねて、楽しいところへもっていってもらうという感じです」
いまは新しいことに挑戦するたびに、達成感があるという。
水曜日のカンパネラの最新アルバム『ジパング』(TSUBASA RECORDS)。ヤフオク! のCM「ツイッギー」をはじめ、さらに振り切った面白さが満載。
2008年発表の1stフルアバム『Falliccia』(hydeoutproductions)。 優美な生演奏とプログラミング・サウンドが躍動感あふれるビートで展開される心地よい音。