空中庭園、もしくは異空間への入り口か? ボルタンスキーの『アニミタス』を体感しに、エスパス ルイ・ヴィトン東京へ。
フランスを代表する現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー。彼が近年最も力を入れているプロジェクトが「アニミタス」です。そのシリーズの2作品『アニミタス(ささやきの森)』と『アニミタス(死せる母たち)』が、東京・表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で公開展示されています。
無数の風鈴の音を響かせる空中庭園のような展示スペースは、東京というメガロポリスのなかに突如として現れた「異空間」への入り口のようです。
『アニミタス(ささやきの森)』は2016年に日本で、『アニミタス(死せる母たち)』は2017年にイスラエルの死海で、日の出から日没までワンカットで、カラービデオで撮影されました。どちらも10時間以上ある大作です。地面に突き刺さった白く細い棒、その棒に吊るされた無数の日本の風鈴。風鈴に付けられた短冊が、風に吹かれ、揺らめいて金属的な音を周囲に響かせます。なにか事件が起きるわけでもなく、ただ風が吹き、風鈴が鳴り、時が過ぎていきます。そして何事も変わらないようでいて、すべてが変化していきます。極限的な、無常ということ。ウエットな日本の森と、ドライの極致のような死海の光景。カメラはそれをじっと写し続けます。
「アニミタス」の原点は、「死者を祀る路傍の祭壇へのオマージュとして人里離れた広大な野外に設置された、300個の日本の風鈴からなるインスタレーション」だといいます。ボルタンスキーが生まれた日の星座の配列をなぞるように棒を刺し、風鈴を設置したもので、シリーズ第1作はチリのアタカマ砂漠で行われました。以後、世界中のさまざまな場所で再解釈され再現されているのです。
ちょうど現在、六本木の国立新美術館で、ボルタンスキーの大規模な回顧展『Lifetime』が開催されています。会場構成も手がけたボルタンスキーは、Pen Onlineのインタビューの際、「私はいつも同じ作品をつくっている」と語りました。アーティストの生活とは旅のようなもので、異なるやり方で同じ旅のことを語っている、と。
もちろん、素直に彼の言葉を受け取るべきでしょう。しかし、実際に『アニミタス』の最新シリーズを体感してみると、ボルタンスキーの作品は、そのテーマを拡大させ、スケールを成長させ、作品が伝えるメッセージの強度も増してしているように思えたのです。
クリスチャン・ボルタンスキー―ANIMITAS II
開催期間:2019年6月13日(木)~11月17日(日)
開催場所:エスパス ルイ・ヴィトン東京
東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F
TEL:0120-00-1854
開館時間:12時~20時
休館日:ルイ・ヴィトン表参道店に準ずる
入場無料
http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja/