代表作『四季』が奇跡の勢ぞろい! 「アルチンボルド展」で皇帝の知のラビリンスを体感せよ!
ジュゼッペ・アルチンボルド。
その名は知らずとも、果物や野菜、花や樹木、鳥や魚などを巧みに組み合わせた人物画といえば、どこかで見たことがあるのではないでしょうか。驚愕の写実で描かれる博物の数々が表す横顔の肖像画は、斬新な発想と不気味な魅力で、強い印象を残します。
画家アルチンボルドは、16世紀後半ウィーンとプラハに君臨したハプスブルク家で活躍した宮廷画家でした。仕えた王は自然科学への関心を深めた君主マクシミリアン2世と、稀代の芸術愛好家として知られるルドルフ2世、ふたりの神聖ローマ皇帝です。彼らの寵愛を受けたアルチンボルドの作品は、皇帝へ捧げられたものであり、その威光と知性の宇宙的な世界を表すものでした。それは単なる発想にとどまらず、当時の博物学への熱狂と、その蒐集であらゆるものを体系化していく西洋自然科学の知識にさまざまな象徴を含み、まるで“暗号”のように多様な意味をまとっているのです。しばらく歴史に埋もれていましたが、20世紀にシュルレアリスムのアーティストたちに再発見され、その奇想と知識、驚異と論理をみごとに融合させた奇才の作品はふたたび注目されて、現代の人気に至っています。
このアルチンボルドを本格的に紹介する日本では初めての展覧会が東京・国立西洋美術館で始まりました!
遺された作品が少なく、揃えることが困難な彼の油彩画が、世界の主要美術館から約10点も集結、そこには代表作『四季』が揃い、対で制作された『四大元素』も帰属と考えられるものを含んで並ぶ、奇跡的な空間が実現しています。
また、「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」といわれた、博覧強記な蒐集を生み出した宮廷の文化環境を、ハプスブルク家の豪華で珍奇な蒐集品で感じます。その中で画業にとどまらず、宮廷の祝祭行事の演出家としても活躍していたアルチンボルドのもうひとつの貌も紹介。さらには職業や特徴的な容姿に因んだ「寄せ絵」にはカリカチュアとしての笑いを、上下をひっくり返すと内容が変わる「上下絵」には静物画の先駆者としての姿を、その独創の作品に追随者のものも合わせ、いまも人々を魅了する謎の画家を時代とともに浮かび上がらせます。
ルネサンスの息吹を受け、そこから独自のコスモスを生んだ西洋の奇想画家アルチンボルド。作品それぞれがわたしたちを知の迷宮へと誘います。日本の“だまし絵”とは一味違う目くるめくラビリンスを、宮廷の空気とともに楽しんで。
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「アルチンボルド展」
~9月24日(日)
開催場所:国立西洋美術館
東京都台東区上野公園7-7
開館時間:9時30分~17時30分(金・土曜日は21時まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(ただし7/17(月)、8/14(月)、9/18(月)は開館)、7/18(火)
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
入場料:一般1600円ほか