まじめな問いを、笑えるアートに

『デイヴィッド・シュリグリー 「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」』

水戸芸術館現代美術ギャラリー

まじめな問いを、笑えるアートに

川上典李子 エディター/ジャーナリスト

『ダチョウ』2009年。Courtesy: Artist and the British Council Collection Photo: Stephen White

『虫‒無題(413点の彫刻)』2007年。Courtesy: Artist, Stephen Friedman Gallery, London and Galleri Nicolai Wallner,Copenhagen Photo: Marcos García

『ルーズ・ユア・マインド』の展示風景、 2015年。カバーニャス文化学院(メキシコ)。本展は、世界5カ国を巡回。 多数のドローイングをはじめ、アニ メーション、コンセプチュアルな作 品まで広く紹介する。話題の『リアリー・グッド』のバルーン版も登場。Photo: Marcos García

イギリスらしいブラックユーモアあふれる作品で注目されるデイヴィッド・シュリグリー(1968年生まれ)。日本初の大規模個展となる今回、まずは挑発的な展覧会名に注目したい。訳せば「正気を失え」なのだ! 

グラスゴー美術学校時代の専攻は環境芸術。卒業後、ロックバンド「ブラー」のプロモーションビデオにアニメーション制作でかかわったりもした。 

自作の絵を複写して綴じ、『愚か者との電話中に描いたドローイング』など、彼らしいタイトルの本を制作し始めたある日のこと。ギャラリーのコピー機で本をつくっていると、個展の誘いが舞い込んだ。「個展を開いて雑誌の表紙になるまで、2〜3カ月だった」と、一躍有名になった日々をシュリグリーは振り返る。これまでに多数の個展を開き、13年にはターナー賞にもノミネートされている。 

軽妙なアプローチは深い問いと一体だ。たとえば動物の剥製の作品。「I'mdead」というプラカードをもって立つ子犬や子猫の作品や、頭を失ったダチョウの作品がある。マイケル・ジャクソンが飼っていたチンパンジーのための仮設の祭壇をつくったことも。 

現在はトラファルガー広場で高さ7ⅿのブロンズ彫刻『リアリー・グッド』を展示中。この重要なパブリックアート・プロジェクトで、彼は異様なほど長い親指を突き立てた、「いいね」の仕草の彫刻を発表した。 

水戸芸術館現代美術センターの学芸員、竹久侑の言葉を引用しておこう。「ブラックユーモアが際立つシュリグリー作品ですが、真骨頂は美術の特権的な在り方をネタにする態度。美術を揶揄しながらも、美術を信じる彼の作品は笑いと問い、思考を促します」 

圧倒的なドローイングからも伝わってくるユーモア、皮肉、ダブルミーニング。そのダークな世界に足を踏み入れてみようではないか。

『デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」』

開催期間:~2018年1月21日(日) 
水戸芸術館現代美術ギャラリー 
TEL:029-227-8111 
開館時間:9時30分~18時 
※入館は閉館の30分前まで 
休館日:月(1/8は開館)、12/27~2018/1/3、1/9 
料金:一般¥800(税込) 
www.arttowermito.or.jp/gallery

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