『デイヴィッド・シュリグリー 「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」』
水戸芸術館現代美術ギャラリー
まじめな問いを、笑えるアートに
川上典李子 エディター/ジャーナリストイギリスらしいブラックユーモアあふれる作品で注目されるデイヴィッド・シュリグリー(1968年生まれ)。日本初の大規模個展となる今回、まずは挑発的な展覧会名に注目したい。訳せば「正気を失え」なのだ!
グラスゴー美術学校時代の専攻は環境芸術。卒業後、ロックバンド「ブラー」のプロモーションビデオにアニメーション制作でかかわったりもした。
自作の絵を複写して綴じ、『愚か者との電話中に描いたドローイング』など、彼らしいタイトルの本を制作し始めたある日のこと。ギャラリーのコピー機で本をつくっていると、個展の誘いが舞い込んだ。「個展を開いて雑誌の表紙になるまで、2〜3カ月だった」と、一躍有名になった日々をシュリグリーは振り返る。これまでに多数の個展を開き、13年にはターナー賞にもノミネートされている。
軽妙なアプローチは深い問いと一体だ。たとえば動物の剥製の作品。「I'mdead」というプラカードをもって立つ子犬や子猫の作品や、頭を失ったダチョウの作品がある。マイケル・ジャクソンが飼っていたチンパンジーのための仮設の祭壇をつくったことも。
現在はトラファルガー広場で高さ7ⅿのブロンズ彫刻『リアリー・グッド』を展示中。この重要なパブリックアート・プロジェクトで、彼は異様なほど長い親指を突き立てた、「いいね」の仕草の彫刻を発表した。
水戸芸術館現代美術センターの学芸員、竹久侑の言葉を引用しておこう。「ブラックユーモアが際立つシュリグリー作品ですが、真骨頂は美術の特権的な在り方をネタにする態度。美術を揶揄しながらも、美術を信じる彼の作品は笑いと問い、思考を促します」
圧倒的なドローイングからも伝わってくるユーモア、皮肉、ダブルミーニング。そのダークな世界に足を踏み入れてみようではないか。
『デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド-ようこそダークなせかいへ」』
開催期間:~2018年1月21日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー
TEL:029-227-8111
開館時間:9時30分~18時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(1/8は開館)、12/27~2018/1/3、1/9
料金:一般¥800(税込)
www.arttowermito.or.jp/gallery