ワタリウム美術館のユニークな30年の歩みから、 東京のいまを再考する。

ワタリウム美術館のユニークな30年の歩みから、 東京のいまを再考する。

文:赤坂英人(美術評論家)

建築家マリオ・ボッタが、ワタリウム美術館のプレ公開の際に制作した黒板ドローイング、 1990年7月17日。撮影:今井紀彰。ワタリウム美術館は今年で開館30周年を迎えるが、それ以前は、現在、美術館がある場所にギャルリー・ワタリがあった。それ故、30年以上の時間をこの美術館に感じる人も多いかもしれない。

東京の外苑西通り、通称キラー通りに面した場所に立つ瀟洒な私立美術館。スイスの世界的な建築家マリオ・ボッタが設計した個性的なファサードも印象深いワタリウム美術館が、今年9月に開館30周年を迎える。それを記念して開催されるのが『アイラブアート15 生きている東京展』である。新型コロナウイルスが世界中に広まるパンデミックが発生し、政府が緊急事態宣言を出した年に開かれる展覧会タイトルが「生きている東京」とは、なんとストレートな題名だろう。

ワタリウム美術館は次のようなメッセージを出した。

「2020年、パンデミックの状況下、世界規模で何かが大きく変わろうとしています。1990年の開館以来、東京からアートをと、この場所でさまざまな作品が生み出されてきました。アーティストたちが見たこの30年間から、東京を再考いたしたく、本展では、コレクションを中心に、未公開ドキュメント、さらにゲストアーティスト3人を交え展示します。」

展示されるアーティストは、島袋道浩、中国のジャン・ホワン、寺山修司、齋藤陽道、フランスのJR、ドイツのオラフ・ニコライ、アメリカのデイヴィッド・ハモンズ、韓国のナムジュン・パイクなど12人に加えて、ゲストアーティストの会田誠、写真家の渡辺克巳、SIDE COREの3組である。

選ばれたアーティストを見ると、ワタリウムで展覧会をした作家の多様さ、ラディカルさが際立つ。既存の枠にとらわれない、境界を横断していく人ばかりだと改めて気が付く。たとえばナムジュン・パイク。彼は現代音楽の作曲家でありパフォーマーであり、ビデオ・アーティストであり東西を超える哲人だった。また彼らはみな一筋縄ではいかない人たちだった。そんなアーティストと作品に、いまを生きるヒントがありそうだ。

島袋道浩『象のいる星』 撮影:今井紀彰

会田誠『東京城』2019年。Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13「パビリオン・トウキョウ 2020」より。 撮影:今井紀彰

『アイラブアート15 生きている東京展』
開催期間:9/5~2021年1/31
会場:ワタリウム美術館
TEL:03-3402-3001
開館時間:11時~19時(水曜は21時まで)
休館日:月(9/21、11/23、1/11は開館)、12/31~1/4
料金:一般¥1,200(税込)
www.watarium.co.jp
※臨時休館や展覧会会期の変更、また入場制限などが行われる場合があります。事前にお確かめください。

ワタリウム美術館のユニークな30年の歩みから、 東京のいまを再考する。