「大人の名品図鑑」ジョニー・デップ編#2
ジョニー・デップ──端正な顔立ちと、憂いを帯びた瞳。役柄に“成り切る”演技はまさに一級品で、ハリウッドの頂点にあっても“異端児と”呼ばれる唯一無二の存在だ。ファッション好きとしても知られ、身に着けるものにも映画同様に熱い視線が注がれる。そんな彼が、プライベートや映画の中で身に着けた名品を追う。
俳優ジョニー・デップの洒落た着こなしを集めた書籍が、2013年に日本でも出版されている。『ジョニー・デップ ファッション コンプリート ブック』(マイナビ)だ。この本に掲載されている写真はジョニーのプライベートなスタイルを収めたものだが、ほとんどの場面で眼鏡かサングラスをかけている。本の中でもこれらのアイウェアは「ジョニーのアイコン」と断言している。
写真をチェックすると、さまざまな種類の眼鏡、サングラスをジョニーは愛用しているが、いちばん有名なのが、アメリカの「タート オプティカル」のクラシックな眼鏡だろう。この眼鏡はジョニーが映画『シークレット ウインドウ』に出演したときにかけて以来、愛用することになったと言われている眼鏡だ。
『シークレット ウィンドウ』は2004年に公開された映画だ。スティーブン・キングの中編小説『秘密の窓、秘密の庭』を原作とする、サスペンス仕立ての作品。この映画でジョニーが演じるのは、妻との離婚もあってスランプに陥っている人気作家のモート・レイニー。そんな彼の元に、「オレの小説を盗んだ」と訴える謎の男、ジョン・シューター(ジョン・タトゥーロ)が現れる。レイニーが盗作したという小説のタイトルは『シークレット ウィンドウ』で、出版されている小説の結末を変えろと迫る。身に覚えのがない言いがかりに困惑するレイニーだが……。
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ジョニー・デップがかけたタート オプティカルのメガネ
ネタバレになるので、映画の筋立てはこの程度に。作品の中で、ジョニーはいつものボサボサの長髪にタート オプティカルのセルフレーム眼鏡をかけて、人気の小説家を演じる。彼が小説を書くのは妻エイミーと暮らしていた田舎町の湖畔の別荘。肩の辺りが大きく破れた縞柄のガウンや、はき込んでくたびれてしまったパンツからも、レイニーの怠惰な暮らしぶりがわかる。ジョニーはこの作品でずっと同じ眼鏡をかけているが、よく見ると独特だ。フレームの外側はブラウンなのだが、内側がクリスタル、つまり透明になった、とても凝ったデザイン。こんなカラーリングの眼鏡はそうそうあるものではない。一説にはこれは同ブランドのヴィンテージのものが選ばれていると言われているが、彼が気に入ったのも、このカラーリングにあるのではないだろうか。
タート オプティカルは、1950年代初頭にアメリカで創業された、歴史あるアイウェアブランド。創業当時はマンハッタンの中心部に12階建ての自社ビルを構え、数多くの著名人が愛用した眼鏡だ。顧客リストには第32代アメリカ合衆国大統領のフランクリン・ルーズベルトも挙がる。今回紹介するジュリアス タート オプティカルは、その由緒あるブランドの創業者ジュリアス・タートの意思を引き継いだ、ジュアリアスの甥リチャード・タートと、眼鏡デザイナーのタミー・オガラが創設したブランドだ。ジョニーが愛用したのは「アーネル」というモデルだが、そのモデルの50〜60年代の資料を元に忠実に復刻した「AR(エーアール)」もラインナップされている。フレームにこのブランドのシンボルになっているダイヤモンド型のリベットが入り、タート オプティカルが開発した耐久性の高い7枚駒蝶番も忠実に再現されている。
ちなみにオリジナルの「アーネル」というモデルを愛用した有名な俳優がいる。ジェームス・ディーンだ。デニス・ミークルが書いた『ザ・ジョニー・デップ その幻想その真実』(廣済堂出版)の中で、『エルム街の悪夢』(1984年)の監督ウェス・クレイヴンは「催眠術にかかってしまいそうなハンサムな顔立ちと、溢れる魅力を見いだしたんだ。ジョニーには、物静かだが、カリスマ的な魅力をもっていたジェームス・ディーンと通じるものがあった。それは他の俳優がもち得ないものだったよ」と語る。ジョニーがジェームス・ディーンを敬愛していたこともよく知られているが、ある意味、この眼鏡はそんなジョニーが運命的に手にした眼鏡とも言える。
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