「Leitz Phone 1(ライツフォン ワン)」は、外装デザインやユーザーインターフェイスを含めライカカメラ社が全面監修した5G対応のアンドロイドOSスマートフォン。その概要はすでにPen Onlineでも紹介されていますが、やはり注目すべきはカメラ機能。作例を拝見して、一般的なスマートフォンとは一線を画すダイナミックレンジの広さを感じました。さらに気になったのは極めてライカ的なデザインの方法論。そこで本稿では、個人的に感心したディテールに関して掘り下げてお伝えしようと思います。
「ライツフォン ワン」の1とは、ライカのスマートフォン初号機であることに加え、スマートフォン用としては最大クラスの1インチセンサーを搭載していることも示唆しています。通常、センサーのサイズを大きくすれば写真の画質は向上しますが、同じ画角で撮れるレンズの焦点距離は長くなります。そうするとレンズの全長も当然長くなるので、平べったいスマートフォンに装備すると出っ張りが生じてしまう。「ライツフォン ワン」のカメラモジュール搭載部が本体よりも少し厚みがあるのは、カメラの機能を優先させたことによるのです。
特筆すべきポイントとして、「ライツフォン ワン」は少しだけ出っ張ったカメラモジュール搭載部に金属製のキャップが付けられるのです。ライカの交換レンズには、大昔からこんな雰囲気のキャップが付属していて、ヴィンテージのキャップはそれ自体が中古カメラ屋さんでマニア必携のアイテムとして流通しています。そもそも写真レンズとは撮影しない時にはキャップで保護すべき精密な光学部品で、直接指で触れたりしたら怒られるようなものだったわけです。だから、同梱された伝統的なスタイルのキャップが意味するところは、“本機は他のライカと同様に、精巧な光学製品として大切に扱われるべきである”というメッセージなのだと思います。
上の写真は、ライカM10発表時にドイツ・ウェッツラーにあるライツパークで取材した際に撮影した、ライカカメラ社デザイン部門のマーク・シェパード氏。今回の「ライツフォン ワン」のデザインも担当しています。彼が現在のライカを代表するモデルである「ライカM10」のデザインワークに関して強調していたのは、"いかにアイコニックな表象を新機種にも自然に織り込めるか"というテーマでした。歴代のライカに持続する潮流を見据え、その流れに沿っているかどうかでデザイン要素の整合性を精査する。そんなストイックな思想が「ライツフォン ワン」からも感じられます。
カメラモジュールの出っ張り外周に沿って、ピッタリと吸い付くように装着できる金属製のキャップ。伝統的なレンズキャップでは通常キャップの内側にフェルトなどが貼られ、その摩擦力で保持するのですが、「ライツフォン ワン」ではなんと磁力を利用しています。しかも本体とキャップ双方に永久磁石を配することで、ロゴがビシッと水平の位置で決まるんです。これは昔ながらのキャップでは実現できなかった美点ですね。その磁束を可視化すべく、発表会場のデモ機に家から持ってきたクリップを近づけて実験してみたのが上の写真です。
ヴィンテージのレンズキャップはロゴの水平が一発で決まらないことに加え、経年変化でフェルトが痩せてキャップがゆるくなりがちです。そこでスタジオ用品のパーマセルテープを重ね貼りしたら逆にきつくなり過ぎて簡単に外せなくて困るということがあるのですが、「ライツフォン ワン」で採用された磁力方式なら心配無用。次のスマートフォンに買い換えるまでずっと同じ保持力でキャップの付け外しができると思います。
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ソフトバンク携帯電話から:157
URL:https://www.softbank.jp/mobile/products/smartphone/leitz-phone1/
ライター
1964年東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒。松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間務める。在職中から腕時計やカメラの収集に血道をあげ、2002年に独立し「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」などの雑誌やウェブの世界を泳ぎ回る。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)など。
1964年東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒。松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間務める。在職中から腕時計やカメラの収集に血道をあげ、2002年に独立し「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」などの雑誌やウェブの世界を泳ぎ回る。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)など。