キリンウイスキーの「富士山麓」ブランドの味わいを支える、富士御殿場蒸溜所の独自性とは。日本を代表するふたりのブレンダー、田中城太と肥土伊知郎が語り合いました。
この日、キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所の熟成庫には、世界が注目するふたりのブレンダーの姿がありました。キリンビールのマスターブレンダー田中城太さんと、ベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所の肥土伊知郎さんです。世間の常識から考えると、競合他社のライバル関係にあるふたりではありますが、当事者同士は決してその枠にとらわれることなく、お互いの蒸溜所を度々行き来しながら、情報交換を行なう間柄なのです。
霊峰のふもとで生まれる、味わい深いグレーンウイスキー
1973年に製造を開始した富士御殿場蒸溜所は、モルトウイスキー用の蒸留釜、ポットスチルだけでなく、香味特長の異なる3タイプのグレーンウイスキーをつくりわけることのできる珍しいグレーン蒸留器を複数擁する、世界的にも稀な蒸溜所。一方、肥土さんの手によって2008年に誕生した秩父蒸溜所は、麦芽の粉砕から仕込み、発酵、蒸留までの工程を、すべて体育館ほどの広さの建屋の中で行なっている小規模な蒸溜所です。設備の種類や規模がまったく異なる蒸溜所で働くふたりだからこそ、それぞれの知識や取り組みから、新しい刺激を受けることも多いのでしょう。
田中さんが樽から取り出して、肥土さんに試飲を薦めた原酒は、新樽で熟成させた5年もののグレーンウイスキーでした。アメリカ以外では富士御殿場蒸溜所でしか使われていない、「ダブラー」という珍しいタイプの蒸留器を用い、「ビアカラム」&「ダブラー」の組み合わせによる連続式蒸留で生み出されるヘビータイプの原酒です。
「5年という短い熟成期間にもかかわらず、とても深みがあって飲みごたえのある味わいですね。最近、富士山麓ブランドの味わいが変わったことには気づいていましたが、実際どうやって新しい個性を出しているんだろうという部分がずっと疑問でした。しかし今日これを試飲させていただいて、やっと合点がいきました」と、肥土さんは語ります。
“らしさ”の追求こそが、 タイムレスな魅力を生む。
肥土さんのコメントを受け、田中さんは富士御殿場蒸溜所の特長を説明します。
「富士御殿場蒸溜所の独自性は、モルトウイスキー以外に、香味タイプの異なる3種類のグレーンウイスキーをつくり分けていることにあります。近年では特に、原酒本来がもっている香味特長をブレンドに生かすことに注力してきました。富士山麓 シグニチャーブレンドは、モルト原酒に加え、グレーン原酒が味わいの鍵を握るよう仕上げているため、伊知郎さんが感じた変化は、このことによる影響が大きいと思います」
小規模な蒸留設備でウイスキーづくりに取り組む肥土さんも、世界で初めて発酵槽にミズナラを取り入れたり、原料となる大麦づくりやフロアモルティング(スコットランドの伝統的な製麦法)を始めたりと、独自性の確立に向けてさまざまな取り組みを行っています。近年、世界中の評論家たちから、高い評価を受けているジャパニーズウイスキー。その魅力の裏には、田中さんや肥土さんのように、ウイスキーづくりの基本を踏襲しながら、その上に独自の工夫とチャレンジを重ね、特長を磨き上げていって、新しい価値をもった商品を提案していくという、日本人らしいものづくりの姿勢があるのです。
田中城太
●1962年、京都府生まれ。ウイスキー業界の国際的アワード「アイコンズ・オブ・ウイスキー2017」において、「マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。また、同氏がマスターブレンダーとして開発した「富士御殿場蒸溜所 シングルグレーンウイスキーAGED 25 YEARS SMALL BATCH」は、「ワールド・ウイスキー・アワード2017」において、2016年に引き続き、「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞。
肥土伊知郎
●1965年、埼玉県生まれ。株式会社ベンチャーウイスキー 代表取締役社長。2012年2月、自社で蒸留した最初のモルトウイスキー「秩父 ザ・ファースト」はジャパニーズウイスキー・オブ・ザ・イヤー(米国の専門誌主催)を受賞。「ワールド・ウイスキー・アワード」では2017年に「イチローズモルト 秩父ウイスキー祭2017」が、2018年は「Ichiro’s Malt&Grain Japanese Blended Whisky Limited Edition」がそれぞれの部門で最高賞を獲得。
問い合わせ先/キリンビールお客様相談室(平日のみ受付 9時~17時) TEL:0120-111-560
●公式ブランドサイトで「富士山麓」のことを詳しく知る。
ブランドサイトはこちらから
ストップ! 未成年者飲酒・飲酒運転。