グラフィック・空間・映像・アートピースなど、さまざまなアプローチで制作活動を行うアーティストYOSHIROTTEN。
この連載では「TRIP」と題して、古くからの友人であるNORI氏を聞き手に迎え、自身の作品、アート、音楽、妄想、プライベートなことなどを織り交ぜながら、過去から現在そしてこれからを、行ったり来たり、いろんな場所を“トリップ”しながら対談します。
鹿児島県霧島アートの森にて開催される、自身初の公立美術館での個展「FUTURE NATURE Ⅱ in Kagoshima」を目前に控えたYOSHIROTTEN。その制作期間中にもさまざまなプロジェクトが公開される。以前この連載でも紹介した大型複合施設「Otemachi One」でのパブリックアートの第2弾も公開。こうしたプロジェクトと同時進行で、鹿児島の自然を歩きながら作品づくりに励んだ制作の裏側から、会期中に楽しめる鹿児島・霧島のオススメスポットまでをざっくばらんに話してくれた。
──以前に紹介した大手町にある大型複合施設、「Otemachi One」でのパブリックアートの第2弾が公開されましたね。
NORI:12月25日まで公開してます。建物の大きな窓のサイズは35m × 9mかな。そこに透過素材でグラフィックを設置して、ヨシローくんの平面作品としては過去最大サイズ。天気とか、自然光の具合が変わると見え方が全然かわって、館内に差し込む見え方も変わるけど、内側から外をみた時の借景も変化するから面白くって。入道雲にいろんな色がついたりね。幕張で〈SUN〉をやった時に、日本庭園の茶室でも窓に細工をして空間に色をつけるような作品があって、僕あれがすっごい気に入ってて。ずっと、発展版をやりたいなって思ってたのが実現できて嬉しいです。
YOSHIROTTEN:今回は、具体的なモチーフというよりも感覚的に光の波が踊ってるイメージでグラフィックをつくっていきました。大きな窓から空気、風、光が流れているような。
──そんな大手町の制作と並行しながら、10月に鹿児島・霧島アートの森で開催される個展「FUTURE NATURE II In Kagoshima」もいよいよ間近に迫ってきましたね。
YOSHIROTTEN:いま絶賛制作中ですね。東京近郊のさまざまな工場に行って仕上がりを確認している日々です。2018年に発表した個展「FUTURE NATURE」の続編として、今回は鹿児島「霧島アート森」の美術館周辺の自然を歩きながら、フィールドスキャニングしていってて。
NORI:フィールドレコーディングするように、光をグラフデータにできるセンサーをつくったんです。太陽の光を可視化するような。
YOSHIROTTEN:今回は鹿児島が舞台だけど、たとえば富士の麓や高層ビル群のニューヨークのような大都市から、中東の砂漠地帯まで世界各国どこでも発表できるシリーズにしていきたいなと思っていて。今後いろんな場所で開催できたら嬉しいです。
──サイトスペシフィックな展示になると。
NORI:そうですね。今回の展示では、特によしろーくんの生まれ故郷での発表ということもあり、彼の作品がどうして生まれたのかより理解できると思います。僕の目線で言うと、よしろーくんの作品の世界観って、S.F.とスピリチュアルな感覚、自然世界と都市文化だったりが同居してると思うのですが、鹿児島に実際に何度も行くなかで、全部ここにあったんだなと腑に落ちました。例えば、初めて行ってびっくりしたのは太陽の位置が低くて東京で見るより強烈に感じたこと。自然がものすごい力強さを持っていて、それは表層的な生命と活力だけではなくて、活火山のある土地ということもあって死生観だったり、陰陽両方あって。
NORI:あとは「霧島」という地名が、神様が天空から下の世界を見る時に霧の上にポッと島があることに由来している通り、天孫降臨伝説の山や神秘的な場所もたくさんあって。宇宙への興味関心としても、日本初の人工衛星が打ち上げられた観測所があるのですが、よしろーくんは学校の遠足で行ってたんですよね?
YOSHIROTTEN:そうそう。鹿児島の種子島と内之浦に人工衛星の発射地があって。小さい頃に銀河マラソン大会とか出てたくらい「内之浦宇宙空間観測所」は地元に近い。
NORI:神話と科学のどちらも根深いめずらしい土地柄だなと思って。そこの景色を見て育ったよしろーくんがいまの作品をつくってるというのも興味深いなと改めて感じました。
YOSHIROTTEN:極論、宇宙学にはこの地球がどうやってできたかという原点に戻る作業があると思ってて。未来のことを考えれば考えるほど、結局自分たちがいま生きている世界に戻ってくる感覚もパラレル的に起きるんじゃないかなと。 あ、今回UFOつくったのでそれもぜひ楽しんでほしい!
──美術館以外に、そうしたYOSHIROTTENが生まれ育った場所を感じるのも今回の展示ならではの楽しみ方ですね。
YOSHIROTTEN:今回フィールドレコーディングした場所を見て回ってもらうのも楽しいかも。今回は制作にあたり、ペドログラフをリサーチしてて。
──ペドログラフ?
YOSHIROTTEN:石に描いてある古代文字。霧島では、「文字岩」って呼ばれてるのがあって。どうやって書いたのか分からないような、岩と岩のわずかな隙間に書かれた文字がある。霧島に限らず、世界各国にあるらしくて。あと、神様が降り立ったと言われている「天の逆鉾」も霧島ならではの神秘的なスポットですね。
NORI:今度、鹿児島行った時に「天の逆鉾」見に行こうと思ってました。これなんのために誰が刺したのかいまだに不明。数百年そこにあるみたい。おもしろい。
──鹿児島以外にも前回の連載でも紹介した通り、国内外さまざまな大規模展覧会に訪れて刺激を受けてきたここ数ヶ月だと思うのですが、特に印象的だった体験はありましたか?
YOSHIROTTEN:国内外色々回った中でも南仏のヴァサレリーファンデーションと、あと国内だと美術家の篠田桃紅さんの作品には、刺激を受けました。もともと書道家として活動したあと、56年に渡米してから書道ではなく、筆で抽象絵画を描き続けた方なのですが、精神性にもすごく共感して。岐阜現代美術館にできた篠田桃紅コレクションを見てきた時は作品や移設したアトリエを目の前に鳥肌が止まらなかったです。今回の展示では抽象表現に向かった作品も多いので、彼女の作品からはパワーをいただきました。
──最後に、展示に訪れるときのオススメのコースを教えてください!
YOSHIROTTEN:羽田空港から2時間で鹿児島空港に着いて、リムジンバスや車で30〜40分のところにあります。なので、日帰りというよりも2泊くらいして楽しんでもらえると嬉しいですね。霧島は温泉街なので、旅館や温泉も豊富だし、美術館に行く途中で、先ほど話したような雄大な自然を感じてもらえたら嬉しいです。作品にも素材を採取した場所が書かれていますので、終わった後にそこを回るのも楽しいかもしれません。
NORI:あとは、そうめん流しも夏場は最高のエンターテイメントだった。
YOSHIROTTEN:シーズン的に9月には閉まっちゃうところもあるけど、ギリギリやってるところもあるよ。特に霧島神宮の裏にあるみたらしの滝はおすすめです。霧島の川の水がめちゃくちゃ綺麗で、その水を引き上げてそうめんを円卓のように囲みながら食べれます。
NORI:霧島だったら、霧島神宮と霧島神宮古宮址とかね。市内だと、「Nice&Easy」は最高のバー。パノラマビューとカクテルがほんとに美味しくて音も最高。よしろーくんの地元の鹿屋だったら、KOTOBUKI HOTELに泊まってユクサ海の学校までドライブとかね。ぜひ、美術館以外にもいろいろゆっくり楽しんでもらえたら!俺も仕事抜きでしばらくゆっくりしたいもん鹿児島。
特別企画展 ヨシロットン展
「FUTURE NATURE II In Kagoshima」
会期:2024年10月8日(火)〜11月24日(日)
会場:鹿児島県霧島アートの森 アートホール
住所:鹿児島県姶良郡湧水町木場 6340 番地 220
開園:9時〜17時(入園は16時30分まで)
休園:月曜(祝日の場合は翌火曜休園)
観覧料:一般¥1,000(¥700)、高大生 ¥700(¥500)、小中生¥ 500(¥300)
※( )内は前売りまたは20人以上の団体料金
公式サイト:www.open-air-museum.org
アーティストYOSHIROTTENの「TRIP」
連載記事一覧
グラフィックアーティスト、アートディレクター
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR
1983年生まれ。デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、領域を往来するアーティスト。2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」を設立。銀色の太陽を描いた365枚のデジタルイメージを軸に、さまざまな媒体で表現した「SUN」シリーズを発表し話題に。24年秋に鹿児島県霧島アートの森にて自身初となる美術館での個展が決定。
Official Site / YAR