【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第204回フェラーリがフェラーリであるために、守らなければならない約束がある

  • 写真&文:青木雄介
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①.jpg既に2年待ちという熱狂を生んでいるブランド初の4ドア4シーター。 

「プロサングエ」への注目度はすごかった。路肩に寄せればスマホを向けられ、箱根を走れば追いかけられる。ビートルズの来日かよって(笑)。普段、愛車以外に興味を示さないフェラーリオーナーたちもこのクルマばかりは様子が違った。すれ違いざまに「キミか!」と、まるで生き別れた弟を見つけたように見入ってたんだ。

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おなじみのデュアルコクピットはクラッシーでより洗練された。

乗ってみると、4座のシューティングブレーク「GTC4ルッソ」の系譜にあった。見た目こそSUVだけど、乗り味はあくまでもオンロードのための巨大なロングノーズクーペ。「ウルス・ペルフォルマンテ」や「DBX707」といったライバルと似たところがない“フェラーリらしさ”で押し切る、攻めのプロダクトですよ。

その“らしさ”とは、ロングノーズに搭載された6.5LのV12気筒自然吸気エンジンを味わうための設計で、全身でエンジンにフォーカスしていること。「プロサングエ」とはサラブレッド(純血種)を指すイタリア語。過給機もモーターも必要としない自然吸気エンジンのメタファーでもあり、このクルマの魂と言える。

パドルシフトを使えば8速デュアルクラッチの切れ味とともに、あらゆる回転域でドライバーの意志のままに駆動する。そしてフェラーリでしかありえない、無形文化財級に美しいハイトーンサウンドを響かせる。

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後部ドアはリアヒンジで最大79度開く。

コーナリングは、フロントとリアの重量配分が49:51という、フロントミドシップでミッションをリアアクスルに配置したバランスのよさが際立つ。四輪駆動は4速までで、5速以降は完全な後輪駆動になる設計。通常、ステアリングはフラットだけど、攻め込んでいくとわずかにアンダーが出る。腕に自信があるなら、高速コーナーで、そのままアクセルだけでドリフトにもっていけるはず。

少し前まで旗艦モデルだった「812スーパーファスト」もそうだったけど、V12搭載モデルを際立たせるテクニックとしてドリフトが想定されているところも“フェラーリらしさ”だと感じた。家族で乗れるフェラーリではあるけど、サーキットでこそ真価は解放される。家族を乗せてドリフトだなんて想像するだけで心拍数が上がるけど(笑)、ライバルたちがここまでスポーツカーとして仕上がっているかというと、自信ないですよ。

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F140型をベースに新設計されたV12型エンジンをフロントミドシップに搭載。

フェラーリがSUVをつくるなら、パワーユニットはV6かV8のハイブリッドで間違いなかった。速くてより低燃費でモーターのアシストが使えるハイブリッドは普段使いとして申し分ない。では、なぜつくらなかったのか? その理由は名前に込められている。

競走馬や猟犬など血統主義の世界では、同種による混じり気がない血筋をなによりも大事にする。サラブレッドという名前はV12気筒エンジンを指すのと同時に、エンジンやフレームといった基幹パーツを(ライバルたちのように)他ブランドと共有していないという自負も含まれるのだろう。

先に名付けられた「ローマ」同様「プロサングエ」も、幾重にも意味が込められた名前。その名に期待される走りを誓いのように守っている。フェラーリがフェラーリであるために、大事なのはそこだと思ったんだ。

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最新のアクティブサスペンションを装備。ピストンロッドに電動モーターを備え、バルブでダンパーを伸縮させる。

フェラーリ プロサングエ

全長×全幅×全高:4,973×2,028×1,589㎜
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6,496cc
最高出力:725ps/7,750rpm
最大トルク:716Nm/6,250rpm
駆動方式:4WD(フロントミドシップ4輪駆動)
車両価格:¥47,600,000~
問い合わせ先/フェラーリジャパン
www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-purosangue

※この記事はPen 2024年9月号より再編集した記事です。