京都で出合う暮らしの道具に魅せられて。
第5回 老舗の逸品編
伝統品からデザインに優れた新しい逸品まで幅広く“いいもの”を紹介する「京都で出合う暮らしの道具に魅せられて」。第5回となる「老舗の逸品編」では、数百年の歴史を誇る、京都を代表する老舗の専門店を紹介します。料理や宮大工、工芸などさまざまな職人が切磋琢磨してきた街ゆえ、老舗の専門店には長い年月をかけて磨き上げられた逸品がずらり。日々の暮らしに取り入れるなら、調理器具や食卓周りの道具がお薦めです。よい道具を使えば、料理も食事もより楽しく豊かになるでしょう。
写真・蛭子 真 文・小長谷奈都子内藤商店
三条大橋のたもとに昔ながらの風情で佇む、棕梠(しゅろ)の箒やタワシの専門店。創業は文政元年(1818年)にさかのぼり、江戸時代に東海道の西の起点であるこの地に誕生したそう。店内に並ぶ商品は約230種類。棕梠の産地である和歌山で、職人に手づくりされたものがほとんどです。いちばん人気が座敷用長柄箒で、こちらは常に入荷待ちの状態。ほかにも、庭掃除用の箒、タワシ、からだ用のボディブラシ、障子の桟やパソコンの埃取り、パームのバスマットなど。一つひとつ使いやすいように工夫がされていて、説明を聞くほどに試したくなるものばかり。実はこの店、看板を掲げていません。「いいものをつくっていれば、お客様は繰り返し足を運んでくれますから」。7代目当主・内藤幸子さんの優しい笑顔にも癒されます。
内藤商店
京都市中京区三条大橋西詰
営|9時30分〜19時30分
休|1/1〜1/3
☎︎|075-221-3018
京都市中京区三条大橋西詰
営|9時30分〜19時30分
休|1/1〜1/3
☎︎|075-221-3018
市原平兵衞商店
明和元年(1764年)の創業より、宮廷御用達として続く箸専門店。「一代に一品以上の箸をつくること」という家訓のもと、いつの時代も独自の製品を生み出してきました。先代である7代目が考案したみやこばしは、とりわけファンが多い一品。約150年の時を経た希少な煤竹を使い、細く削った箸先が特徴です。当代考案の平安箸は、粘り気と弾力性のある、育って3年めの京都の竹を使用したもので、拭き漆仕上げが施されたもの。ほかにも、ひとりひとりに合った箸を選んでほしいと、店内には約400種類が揃います。箸の使い方や手入れ方法など、ていねいにアドバイスをもらえるのも嬉しいポイント。毎日口に触れるものだからこそ、数ある中から吟味して、お気に入りの品を探してはいかがでしょうか?
市原平兵衞商店
京都市下京区堺町通四条下ル
営|10時〜18時30分(月〜土)、11時〜18時(日、祭)
休|不定休
☎︎|075-341-3831
京都市下京区堺町通四条下ル
営|10時〜18時30分(月〜土)、11時〜18時(日、祭)
休|不定休
☎︎|075-341-3831
菊一文字
明治9年の廃刀令以降、一般刃物の取り扱いをスタートした菊一文字。鍛冶屋としての歴史まで遡ると、なんと700年以上という老舗中の老舗。 寺町三条のアーケード内にある店内には、包丁を中心に、園芸用の剪定鋏、裁縫用の裁ち鋏、大工道具、彫刻刀、梳き鋏、爪切りなど、ありとあらゆる刃物がところ狭しと並んでいます。同じ種類でも、サイズや素材もさまざま、プロ用から家庭用までと幅広い品揃え。道具好きなら、一つひとつを眺めるだけでも楽しめること間違いなしです。ここでまず求めるなら、切れ味と錆びにくさに定評のある包丁を。名入れの無料サービスや、自社製品にかぎり修理や研磨にも対応してもらえるので、一生ものを探してみては? 切れ味の違う包丁が、料理の腕を格段に上げてくれるはずです!
菊一文字
京都市中京区三条通寺町東入ル石橋町14
営|11時〜17時30分頃(月〜水、金、土)
12時〜17時30分頃(日)
休|木曜
☎︎|︎075-221-0077
www.kikuichimonji.co.jp
京都市中京区三条通寺町東入ル石橋町14
営|11時〜17時30分頃(月〜水、金、土)
12時〜17時30分頃(日)
休|木曜
☎︎|︎075-221-0077
www.kikuichimonji.co.jp
公長齋小菅
賑やかな三条河原町交差点から至近にあるホテルの1階、モダンで洗練されたインテリアが街ゆく人の目を引きます。ここは1898年創業の老舗創作竹工芸品メーカー、公長齋小菅のフラッグシップショップ。センスよくディスプレイされているのは、花籠からバスケット、トレイ、調理器具、お香に至るまで、すべて自社製作の竹アイテムです。骨董の竹籠や竹をテーマにしたアート作品も空間を飾っています。「竹工芸を知って楽しんでもらえる発信地にしたい」と語るのは、五代目小菅達之さん。北欧デザインのエッセンスを商品に取り入れたり、イタリアの革工房とタッグを組むなど、若い感性を発揮して、幅広い世代や海外に販路を広げている立役者。伝統を重んじながら進取の精神をもつ、それが京都の老舗の真骨頂です。