国産ヴィンテージのグッドデザインはどれなのだろうか……? そんな疑問を晴らすべく、カーデザイナーの中村史郎さんと一緒に、パシフィコ横浜で開催された「ノスタルジック2デイズ」の会場を巡った。
情熱と時代性で、デザインは創られる。
会場で最初に目に留まったのは「いすゞ・ベレットGT」。中村さんにとっての最初の愛車でもある。
「僕は、いすゞデザインの開祖となった井ノ口誼さんに影響されていすゞに入ったんだけど、このクルマには創設メンバーの若々しい才気を感じます。彼らは当時デザインの先端であった欧州への憧れを昇華して、日本のスタイルを構築したんだと思います」と語る。
一方で、中村さん自身も所有する同時代の日産の傑作デザイン「初代シルビア」や「フェアレディZ(S30)」などについても、「60年代の海外のクルマに影響を受けながら、若いデザイナーが独自の美しい日本的なデザインを創り出した。当時コンサルタントとして来日していたドイツ人デザイナー、アルブレヒト・ゲルツがもち込んだ凛としたクルマの佇まいを無意識のうちに吸収したというのがあると思います」
中村さんは、マツダのデザインに関しても高評価だった。「マツダって、自動車への愛情を感じるんです。『R360』や『コスモ・スポーツ』の時代から、クルマや先端メカへの憧れがデザインに現れている。しかもそれが、現代まで続いているのがいいですよね」
トヨタのデザインにも話題がおよんでゆく。「『2000GT』も素晴らしいですけど、『スポーツ800』は傑作でしょう。この独創的なデザインは、どんな自動車の影響も感じない。飛行機など、クルマ以外のものからインスピレーションを受けています。それと、『セリカ(初代)』のように数少ないスポーツモデルに傑作が多いですね。セリカは、アメリカンな雰囲気がありますが、この時代のトヨタデザインを代表する素晴らしいスタイルです」と中村さんは括った。
「自動車のデザインって、よくひとりのデザイナーの名前が出ますが、一部の例外を除いて『ひとりでデザインするのは不可能』です。クレイモデルを製作するモデラー、そして全体を指揮するディレクターなど、みんなの気持ちが一致して初めていいデザインが生まれます。結局、人との出会いと時代のハーモニーがデザインを創ります」
日本のヴィンテージカーのデザインはクルマへの情熱と60~70年代のエネルギーが結実したモノ。この積み重ねが、未来につながる新しい自動車のデザインを創り出していくのである。
中村史郎さんが推す、グッドデザインの日本車。
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こちらの記事は、Vマガジン Vol.02「世界に誇る名ヴィンテージ こんな日本車を知っているか?」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。