日産自動車、伝説の名車を振り返る。【FAIRLADY Z編】

  • 写真:谷井功
  • 文:清水雅史(モンキープロダクション)
  • 協力:日産
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日本車のヴィンテージを語るときにかかせないブランドといえば「日産自動車」だろう。戦前の「フェートン」からレーシングカー「R91CP」まで「伝説の名車」を7台紹介する。今回はご存知、「FAIRLADY Z」にクローズアップ。

ダットサン240Z(フェアレディZ) 年式:1972年 | 型式:HLS30型 | 全長:4115mm | 全幅:1630mm| 全高:1290mm|ホイールベース:2305mm | トレッド(前/後):1355/1345mm | 車両重量:1050kg | エンジン:L24型 水冷直列6気筒SOHC | 排気量:2393cc| 最高出力:162kW(220PS)/7200rpm | 最大トルク:230N・ⅿ(24.0kgm)/6400rpm | サスペンション(前/後):ストラット / ストラット(独立)| ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ ドラム(アルミフィン付) | タイヤ:70-14

ラリーフィールドで性能を磨く、ロングノーズのスポーツカー

海外を舞台にしたモータースポーツで、日産自動車が最初に成果をあげたのはラリー。1958年のオーストラリア一周ラリー「モービルガス・トライアル」に2台の「ダットサン1000(210型)」が出場し、クラス優勝を飾ったのである。

ベースとなる量産車の性能が結果に大きく影響するラリー競技への参戦は、クルマの性能を磨くためにも、また優れた性能や品質を広く知らしめるためにも効果的だった。それゆえ日産は「ダットサン」でのチャレンジを継続し、63年からはブルーバード310型で東アフリカ・サファリラリーに出場。続く410型によるクラス優勝を経て、70年には510型で念願の総合優勝を果たす。さらに翌71年にはスピード重視型ラリーへのコース変更を受け「ダットサン240Z」、つまり国内では“フェアレディZ”と呼ばれるスポーツカーに参加車両をチェンジし、見事に連覇を果たした。

フルバケットシートを装着するほかはオリジナルの面影を残すコックピット。「haldaの積算計」や「HEUERのラリーマスター」など、当時のラリーマシン定番の計器類が目をひく。

日産の国際ラリーにおける活躍は、L型エンジンを抜きにしては語れない。サファリラリーで優勝した510型ブルーバードは直4SOHCのL16型を搭載していたが、240Zのボンネットの下に収められたのは、L16型を6気筒化したL24型ユニットだ。

サファリで頂点に立ち、モンテカルロでも活躍。

72年にアルトーネンのドライブでモンテカルロ3位入賞を果たした「ダットサン240Z」。フード上にランプポッドを置いたサファリ仕様と異なり、こちらは4連の補助灯をフロントグリル内に収めている。フロントオーバーハングにランプポッドを吊ると全長がのびるため、これを嫌ったアルトーネンが要望したものだという。

アフリカ大陸での過酷なラリーへの挑戦と並行して65年からは歴史あるモンテカルロラリーへの参戦も始めていた。道なき道を行くようなサファリでは、マシンの信頼性や耐久性が勝つために最も必要とされたが、モンテカルロは舗装路のワインディングが待ち構える典型的な欧州型のスピードラリーと、舞台は大きく異なる。さらに「氷と雪」の上の走りが結果を左右するモンテカルロは、低ミュー路を得意とするFFやRRに分があり、当時は「ミニ」や「アルピーヌA110」がめざましい活躍を見せていた。

そんなモンテカルロラリーへ日産はサファリと同じようにダットサン240Zを投入。71年は総合5位だったが、72年には3位でフィニッシュしヨーロッパのラリーファンを驚かせたのである。長いノーズをもったFRのフェアレディZが好成績を残せたのは、ドライバーのラウノ・アルトーネン、コドライバーのジャン・トッドという名コンビの力量はもちろんのこと、素直な操縦性が光るZの扱いやすさがあったからだと言われる。

フェアレディZはデビュー後の9年間で、グローバルでの販売台数を累計52万台とし、スポーツカー空前のヒット作となった。

美しいデザインと高性能、そして実用性をも兼ね備えたスポーツカーに、お手頃なプライスがつけられたのだから、多くの人々が心を奪われたのは当然だろう。

加えてひとたびステアリングを握れば、意のままにクルマを操ることができるグッドハンドリングが、さらなる魅力を感じさせたのだ。フェアレディZの成功は、完璧な商品性に裏打ちされている。

こちらの記事は、Vマガジン Vol.02「世界に誇る名ヴィンテージ こんな日本車を知っているか?」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから。