腕時計の黎明期である20世紀初頭のレトロな雰囲気を復刻した、個性的なモデルが登場しました。クォーツながらも価格は3万円程度と手頃なので、若い時計ファンからお洒落に敏感な人まで、要注目といえそうです。
2レジスターのクロノグラフとスモールセコンドの2タイプあり、直径42㎜と39㎜という現代的なケースサイズ。エッジを丸くしたフォルムにワイヤースタイルのラグ(ベルトとの接合部)、それに大型のリューズが懐中時計から腕時計への移行期という時代性を感じさせます。アラビア数字のアワーマーカーも当時のフォントを再現。数字が大きいだけでなく、蓄光塗料もたっぷり塗布しており、昼夜を問わず視認性は抜群です。分目盛りのレールウェイ(線路型)トラックもクラシカルなイメージ。
さらに特徴的なのは、通称「コブラ針」と呼ばれる装飾性の高い時分針。蛇の頭に似た独特の形状が、ダイヤルにヴィンテージな表情を加えています。もちろんこちらも蓄光塗料付き。針の色も、防錆のために鉄を酸化させるブルースチールの技法から生まれる青色を再現しています。
ムーブメントは日本製クォーツを搭載。耐磁性を高める特殊な構造を採用しているので、磁気に神経質になることなく普段使いできそうです。このモデルの特長はそれだけではなく、「いわく」が2つあります。
まず、メーカーは南安精工。長野県で30年以上にわたって時計製造や修理に携わってきました。長野県は諏訪地方を中心として時計産業で一時代を築き上げた地域です。その伝統を次世代に継承することを目的に、クリエイター集団CEKAI(世界)のプロダクトデザイナー、早川和彦氏が共同して立ち上げた新ブランドが、この「TMPL(テンプル)」です。その名は神殿、寺院などを意味する英語のTEMPLEに由来。腕時計に携わってきた先人たちの功績を讃え、それを愛する人たちが集う存在になりたいという思いが込められているそうです。
今回発表されたモデルは、このTMPLによるファーストコレクションであり、これからも「各時代の腕時計のデザインを独自の切り口で再編集し、現代に高い品質と適正価格で復刻していきます」としています。
もうひとつの「いわく」は、クラウドファンディングを販売のスタートラインにしていることです。購入型クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」内で現地の長野県信用組合が主体となって運営する「Show Boat」で募集。すでに目標金額を大きく超える400万円が寄せられており、新ブランドへの支持が高いことをうかがわせます。本数は限定されますが、申し込みが早ければ、割引率が高くなるというのも興味深い仕組みといえるでしょう。クラウドファンディング終了後は一般販売もスタートする予定。
時計のデザインはレトロでも、販売手法は最先端のITを活用しています。日本の時計産業集積地である長野発の新ブランド。時計ファンの要望や期待に密着した製品展開が、際立った特長になっていくのではないでしょうか。
問い合わせ先/
TMPL info@tmpl.watch
クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」 https://greenfunding.jp/showboat/projects/2377