オフィスから自宅でのテレワークに切り替える企業が増える中で、リビングの一角やダイニングテーブルを利用した作業スペースに、やや行き詰まりを感じている人も多いのではないだろうか。
たとえ一時的なホームオフィスだとしても、快適な環境を整えて、仕事の気分も効率も高めたい。そんな時には、「とりあえずの一脚」ではなくて、ずっと使える新しい椅子をひとつ、インテリアにプラスしてみるのがお薦めだ。普段の生活スタイルに馴染みながらもテレワーク空間をアップグレードしてくれる、個性豊かな5脚を紹介する。
2. 作業時間を特別なひと時に変える、360度で美しい回転椅子。
折り畳みチェアで、外でも中でもフレキシブルに仕事。
通勤や外回りのない毎日は、家の中の定位置で長時間過ごしてしまうことにもなりがちだ。ときにはマンネリな気分を変えて、バルコニーや庭を仕事場にしてみるというのも、テレワークの醍醐味だろう。
ヘリーハンセンとアクタスによるコラボレーションコレクション、LandNorm(ランドノーム)のディレクターズチェアは、カジュアルすぎないマットブラックのアルミフレームが落ち着いた印象。ダイニングにもよく馴染む。気軽に外へ持ち運びできる折り畳み式ながらも、シックな重厚感があり、メッシュ素材の座面がほどよいクッションで身体を支える。
爽やかな空の下、いつもより仕事が捗るか、あるいは心地よくてつい眠ってしまうかは、自分次第だ。
作業時間を特別なひと時に変える、360度で美しい回転椅子。
ル・コルビュジエとシャルロット・ペリアン、ピエール・ジャンヌレが共作し、オフィス家具の名品として知られるスウィベルチェア(回転椅子)の「LC7」。これを、ペリアンがベトナム滞在中の1943年、入手できる材料でアレンジしたのが「INDOCHINE(インドシンヌ)」だ。
金属パイプのシャープな機能美を誇るLC7に対し、インドシンヌの脚は木製のハンドクラフト。書斎やリビングで過ごす時間を特別なものにしてくれる、温かな佇まいが特徴である。一体化した背もたれと肘かけのカーブは、腰掛けた時に身体のラインにしっくりと沿い、座面をなめらかに回転させれば、疲れた気分もたちまちほぐれる。テレワーク期間が過ぎても、ずっと大切に使い続けたくなるマスターピースだ。
本革のバランスボールで、筋力と集中力をアップする。
運動不足になりやすいテレワーカーには、姿勢を意識して腰痛改善にも効果のあるバランスボールを、ワークチェアとして取り入れることをお薦めしたい。とはいえ、従来のスポーティな素材感とビビッドなカラーリングは、どうしてもインテリアから浮いてしまうのが難点だ。
その点、上の写真の品ならいかがだろう。モカベージュとグレーの落ち着いたトーンでリビングにも馴染む本革スエードの「AURA(アウラ)」は、フィレンツェ郊外で3代続くなめし革工房「CASINI(カジーニ)」が開発したバランスボール。球体を包むのに最適な革づくりからスタートし、裁断や縫製にも研究を重ね、職人たちの技術を結集してつくられた逸品だ。
バランスをとりながら姿勢を保つことは、集中力のトレーニングにもつながる。ゆらゆらとゆれるうちに思考もやわらかくなり、ふと新しいアイデアがひらめくかもしれない。
用途は自由自在、汎用性の高い低価格スツールをまず一脚。
ダイニングでPCと書類を広げてはみたものの、合間に食事をしたり、家族とスペースを共有したりと、仕事が捗らないこともしばしば。ダイニングテーブルは生活の中心だからこそ、誰もがニュートラルに使いたいもの。そのためには、作業スペースをコンパクトに保ち、必要とあらばセッティングをすぐさま、こまめに切り替えられる工夫が必要だ。
イケアの三角スツール「KYRRE( シルレ)」は、書類をちょっと積んでおいたり、食事時になったらいったんノートPCを仮置きするなど、サイドテーブルとして使うのにも最適。バーチ材の風合いがどんな空間にも馴染みやすいし、驚きのロープライスなので、気軽にひとつ、またひとつと買い足していけるのもありがたい。
イケアは、日本初の都市型ストアを2020年5月28日、原宿にオープン予定。ホームオフィスづくりのヒントを探しに訪れる日を、楽しみに待ちたい。
浮遊感のあるデザインが、長時間座ったままのストレスを軽減。
テレワークが長引いてメンタルの落ち込みを感じてきたら、デザインの力を借りて、部屋の雰囲気と自分の心に軽快なリズムを取り戻そう。
マーク・ニューソンが手がけた「アルミナムチェア」は、背もたれと座面とが脚部を通してぐるりとつながった、クリエイティビティあふれるデザイン。建築におけるカンチレバー(通常は両端で支えられているのに対し、その一端が固定され、他端が持ち出されて自由な状態にある梁のこと)を応用した、ミース・ファン・デル・ローエの名作「MRチェア」の流れを汲む構造だという。宙に浮くような座面は適度な弾力が感じられ、メッシュのファブリックも軽やかな座り心地だ。
気に入ったデザインの椅子をひとつプラスするだけで、沈みがちな気分もリフレッシュするはず。自分だけの空間を楽しみながら、テレワークを上手に乗り切ろう。