「ヒストリアドール」は、時を飛び越えて現代に蘇ったクエルボ・イ・ソブリノスらしい腕時計だ。スペイン語で「歴史家」を意味するその時計は、まさに歴史の中に隠されたアーカイブから慧眼なヒストリアンに見出されなければ日の目を見なかった、幻の名品にインスパイアされたものだ。そのコレクションの中でも、トリプルカレンダーにムーンフェイズを添えた新作「ヒストリアドールルナ」が注目だ。高い機能とエキゾティックなデザインの魅力的なモデルは、フレッシュな白とブルーのダイヤルと、精悍なブラックバージョン。なんとどちらも、日本だけの限定品である。
日付と曜日を備えた通常のカレンダーに月表示を加えたトリプルカレンダー、しかもムーンフェイズ装備のレイアウトを整理しようとすれば、誰でも苦心するだろう。ところがクエルボ・イ・ソブリノスはその要素の多さを逆手に取り、絶妙な躍動感とリズムをもった文字盤を生み出した。月と曜日表示は切り欠いた小窓のアーチに沿うように斜体文字で書かれ、日付はポインターデイト式。芸術的なカットアウトからはムーブメントと表示ディスクが気を惹き、ムーンフェイズでは出番を待つ「次の月」までも覗き見させる。ケースバックから眺めるローターは文字盤のキーカラーと同色の地に、クエルボ・イ・ソブリノスの立体的な紋章を掲げた。
「ヒストリアドール」のコレクションに共通するデザインソースは、自社のアーカイブからのインスパイアに多く依っている。絶妙なヴィンテージ感は、クエルボ・イ・ソブリノスの大きな魅力だ。絶対的に強烈な第一印象と、どこかで見たことがあるような錯覚はどちらも当たっており、交錯する既視感の揺らぎがひとをより惹き付ける。クエルボ・イ・ソブリノスはオリジナルウォッチを引っさげて欧州にも進出しながら、キューバ革命の嵐で休眠を余儀なくされた。その、突然消えたブランドの残像が、現代に蘇って光輝を放つ。奇跡的なのは物語だけでなく、時を超えた腕時計の魅力そのものなのである。
魅力的な「ヒストリアドール・ルナ」の買い時は、いつが望ましいか。参考までに、クエルボ・イ・ソブリノスが今季実施する「オリジナルトートバック プレゼントキャンペーン」のことを頭に入れておくといい。キャンバス地にブランドロゴ、南国の太陽を思わせるレッドの布ベルトが目を惹くバッグは、購入者だけに提供される非売品。無くなり次第終了の品は、耐久性・信頼性に優れたこだわりの国内製造。これもまた注目の日本限定である。
【連載記事一覧】
一度は潰えたアメリカ大陸最古の時計ブランドが、復活を果たした理由。【クエルボ・イ・ソブリノスを探求する】Vol.1
約1世紀前のデザインを蘇らせた、「プロミネンテ ソロテンポ」の色褪せない魅力。【クエルボ・イ・ソブリノスを探
388求する】Vol.2
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