トゥールビヨンは、高度な時計技術を駆使した機械仕掛けの精緻な華といえるだろう。テンプなどの調速脱進機構をキャリッジ(カゴ)の中に収納し、これを回転させることで重力が及ぼす影響を平均化。高精度を維持する目的で発明されたが、現代の腕時計ではスモールセコンド(1分間に1回転)も兼ねたアートオブジェとしても高く評価されているのではないだろうか。
それを象徴するのが、ダイヤル前面に棒状のブリッジを持たないフライングトゥールビヨンだ。オーデマ ピゲでは2018年に「ロイヤル オーク コンセプト」で初めて採用。このモデルは手巻きだったが、今年11月に発表された最新作「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン」は初の自動巻きで登場した。視野を遮るものがなく、トゥールビヨン機構が完全にオープンになっているため、テンプが毎秒6振動(3Hz)で往復しながら、キャリッジ全体が刻々と回転する複雑な動きをあますところなく観察できる。すべてのパーツをギリギリまで削り込んでいるため、奥の奥まで細部を見通せることも魅力だ。
この自動巻きトゥールビヨンは、ステンレス・スチール、チタン、18Kピンクゴールドの3種類のケースに搭載される。ステンレス・スチールと18Kピンクゴールドのダイヤルベースには「ロイヤル オーク」のトレードマークである「タペストリー」模様が施されているだけでなく、トゥールビヨンを中心として放射状に広がるライン(サンバースト)が加わっている。チタンケースのモデルだけは、これまでになかったサンドブラスト仕上げ。グレーカラーがシックでエレガントな印象を与える。
3モデルともに、24Kゴールドの立体的なシグネチャーが12時位置で光を反射する。昨年発売の「CODE 11.59バイ オーデマ ピゲ」で開発されたものであり、ゴールドの薄いレイヤーでAUDEMARS PIGUETの英文を印字。極細のリンクで接続された文字列がていねいな手作業でダイヤルに植え込まれている。
八角形の特徴的なベゼルを8本のビスで固定した「ロイヤル オーク」は、ステンレス・スチールケースによる初のラグジュアリースポーツウォッチとして1972年に誕生した。文字盤の6時位置で限りなく繊細に仕上げられたトゥールビヨンが回転。金属製の無機質なはずのメカニズムがまるで生き物のような存在感を示す。腕時計は男が身に着けられる数少ない宝飾品とも喩えられるが、この新作はまさに高度な技術力がアートとして結晶化した“ハイジュエリー”といえそうだ。
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